コンセントはどこ?(morinos建築秘話8)
今回はちょっとした小ネタ。でも重要なポイントです。
大きなソファが置かれて、気持ちよさそうなmorinosの談話・図書コーナー。
実はこの写真の中にコンセントが2か所隠されています。見つけられるかな。
実はソファの前と奥の本棚の前にあるのですが、写真を拡大してもなかなか見つけられないと思います。
床部分をアップにしてみます。
これでどうでしょう。黒い小さな穴が見えます。
この穴に指を入れて持ち上げると、コンセントが出てきます。(コンセント使用時に電場を除去できるアース付き)
コンセントを指して、蓋を閉めるとこんな感じ。コードだけ表に出てきます。
使用していないときも使用している時もほとんど目立ちません。
コンセントや空調、換気、照明など、設備関係は運営者が場所や仕組みを理解していれば、あえて主張する必要はなく、きちんとそれぞれの目的を果たし、使い勝手よく計画されているのが理想的です。
morinosは、プログラムに合わせてどこでも活動場所にできるフレキシブルな空間を目指しています。しかもプログラムによっては電源を必要とする場面も出てきますので、コンセントをどのように配置するかは悩みました。
通常はコンセントを壁に設置しますが、ここでも難題が・・・。外壁部分はガラス張りでほぼ壁がありません。
そこで、考えたのが床にコンセントを埋め込むアイデアです。床のコンセントといえば、一般的にはフロアコンセントの既製品を用います。下の写真がアカデミーのウッドラボ工房のフロアコンセントです。
収納時は多少の段差がある程度ですが、コンセントを出すと足を引っかけてしまいそうですし、見た目もかなり主張しています。
morinosでは、この欠点を克服するために、先の写真のようにコンセントを入れた小さな箱を床に埋め込んで隠蔽しています。
120㎡の空間に実に13か所もの床内コンセントがあり(加えて壁付けコンセントもあります)、大工さんに一か所ずつ非常に丁寧に作っていただきました。
どこが丁寧ポイントかもう一度写真をじっくり見てください。
一つ目は、木目が連続していることに気付きます。
床材を張る際に、蓋だけ別に用意するのではなく床の材料から伐り出した蓋パーツをきちんと取り分けて、無くさないように管理されてました。
二つ目は、蓋と床のクリアランスです。0.2mm程度しか空いていません。
かなり近づいても蓋の境が見えないくらいです。電動丸ノコは、通常刃の厚みが1.2~2mm程度あるため、そのままカットすると両サイドに2mm程度隙間が出てしまいます。機能上は2mmでも問題ありませんが、そこは大工さんのこだわり。やるからには徹底的にやろうと、蓋の部材を伐り出してから、それに合わせて、続きの床材を張り始めるという作業を全ての箇所で行っています。
さらに、このぴったりサイズに納めるには、しっかり乾燥管理された材が必須なのはいうまでもありません。
床材のこだわりは、morinos建築秘話5を参照してください。
ガラス張りで壁に取り付く場所の無い外部コンセントも同様です。デッキの下に隠されています。コードを出せる仕組みや木目が連続するこだわりは内部と同様です。
ちょっとしたことですが、活動時に必要ないものが目に入らないため、余計な部分に意識が行かず活動に集中できます。
特にクリアランスに関しては、設計側からそこまでの指示をしていないにも関わらず、大工さんたちがいい建物にしようという心意気で製作していただきました。ものすごく手間のかかるいい仕事です。
大工さんに限らず、今回の工事では随所に職人さんたちの心意気が感じられる仕事の跡が見られます。
准教授 辻充孝