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2019年07月09日(火)

木工事例調査「新井製材所」中津川市連携事業

中津川市連携で行われた「木工事例調査」その見学レポート③を学生から報告いたします。


岐阜県中津川市付知の『新井製材所』に見学に伺わせていただき、社長の新井清人さんにお話しをいろいろと聞きました。

新井製材所は昭和40年代に今の場所に工場を移築し、現在は主に地元の木を使ってボディーブラシの柄の部分(東京墨田区に出荷され、ブラシ部分をつけられた最終製品は「すみだモダン」(http://sumida-brand.jp/brand/brand_s)のブランドをつけられて販売されています。)を中心に、製材を行うだけでなく木の小物を製造されています。

ボディブラシの柄

社長の新井さんと奥さん、従業員2名の計4名に加え、近所の方々がパートで応援してくれることで会社を運営されていることです。

新井さん

新井製材所に到着すると、まずは社名のとおりの工程となる製材機と乾燥設備に案内して頂きました。製材所建屋の西側には古い(昭和38年製造との刻印がありました)製材機が設置され、原木の丸太から板材を挽くところから自社で行われています。製材機に使用されるバンドソー(帯鋸)の刃は穴あきタイプで、冬季に材の水分が凍ってもこの穴のおかげでうまく切れるとのこと。

製材機

製材された材は除湿器を使った簡易な乾燥室に入れて、水分量を板材の表面で8~9%、中心で13~14%に乾燥しているとのことでした。自社で原木から製材するため仕事を早く回せるメリットがあるとこのことです。

製品の「ボティーブラシの柄」は使いやすいカーブがあります。お風呂というお湯に濡れて高湿になる環境で使われるボディーブラシの柄に関しては、「曲げ木」の技術では元に戻ってしまうため、「削り出し」で曲がりを作っています。曲面に対して倣い目になるように回転方向を正逆の2軸のカッターにより、曲面の右側と左側を交互に削って製作するとこのとで、ハンドブラシなどの曲面もこれで削り出せるそうです。また曲面を正確に手早く削り出すために独自の治具が制作され、機械の所有だけでなく加工方法の工夫が必要だなと考えさせられました。

カトラリー置き

治具

製作工房には、あらゆる種類の治具が揃っていました。ベルトサンダーも、写真のような治具で固定して作業できるようにしてあるのです!

製作工房内ではNCルータマシンによる超精密な寄木、白系の材と茶系の材で仕口(柱の接手)を模したカトラリー置きなども製作されています。木製品でいくら機械を使うとはいえ、針葉樹材でこんなに精密な加工ができるのかとびっくりしました。

ならい面取り機

これ以外にも、ブリキ製の野菜入れの木製蓋やブリキ製の足湯の蓋なども制作されていました。製品を効率よく作る工夫以外にも、自社の強みを生かした「新しさ」の追求も必要なのだと感じさせられます。

新井さんによると、木工製品の需要に関しては、近年は減りもしないし増えもしない状況だが、生産者は相当減ったので仕事はある。しかし生産者が減った分をカバーするために製品が多種になり、お客様からの木へのこだわりも強くなったため、工程も複雑になり、対応できる生産者が少ないとのことでした。ライバルが少なくなるのは有り難いが、需要を満足するため守備範囲が広くなるのは大変だなと感じました。また、仕事が続いているのは、「まじめに手間を惜しまず」とのことで、新井さんの謙虚なお言葉の裏には、自社での裁量を増やせる製材・乾燥設備、製作機械の所有や、それらを使いこなす技術・ノウハウが意志的に蓄積されていていると感じ、木工家を目指す私にも、考えることはいろいろあるなと実感させられる一日でした。

最後に見学のお土産にということで、バターナイフの型に削り出したいろいろな樹種の材を頂きました。アカデミーに戻って、学生仲間と一緒に小刀やサンドペーパーで削って使える形に仕上げてみました。

バターナイフ

写真左から、セン、木曽ヒノキ、カリンです。

お忙しい中、いろいろな質問に丁寧にお答えいただいただけでなく、見学のお土産もいただいて、一同感謝しています。新井さん、どうもありがとうございました。

 

文責 森と木のクリエータ科2年輪竹・1年岡田