ドイツ&フィンランド視察報告(ドイツ編)
ドイツ・ロッテンブルク大学との連携協定のもと、12月2日から開催予定の森林環境教育セミナーの打合わせと、森林環境教育施設の訪問、そしてヨーロッパの森林教育指導者が集まるカンファレンスに参加するために、ドイツとフィンランドを訪問しました。報告第1弾は、ドイツ視察時の報告です。
*12月10日(月)17:30からアカデミーにて報告会を実施予定ですのでそちらも是非お越しください。また他日程でもそれぞれの分野での報告会がありますので是非お越しください。
https://www.forest.ac.jp/events/2018overseas_reports/
今回ドイツでは、打合せがメインだったために訪れた場所は3施設にとどまりましたが、2回目、3回目訪問の施設がありながらも新たな発見がありました。訪問した場所は、
* Haus des Wakdes
* Jugend Farm Mohringen
* Die Whülmause
中でも印象的かつショッキングだったのは、今回初めて訪れた「Jugend Farm Mohringen(Mohringen子ども農場)」です。
ここは近隣の3市町村からの助成を受けて運営している場所です。
「子ども農場」ってあまり聞きなれない言葉ですが、ドイツでもシュトゥットガルトのように都市近郊に集中しているようです。
この場所を簡単に表現するならば、郊外の森の中にある「プレーパーク」と「森のようちえん」と「農場(牧場)」が一緒になった場所とでも言ったところでしょうか。ここは子どもたちの成長に必要な要素が全てあると言っても過言ではないくらいの空間でした。いや、あえて言い直すならば「社会が子どもたちから奪い続けてきてしまった大事なことをもう一度体験できる居場所」とでも言った方が良いかもしれません。
子ども時代の家畜とのふれあいは、コミュニケーション、責任感や信頼、自然科学、暮らし、健康、持続可能な暮らしなど様々な視点から重要とされていますが、現代社会、特に都市部においては(最近では田舎でも同じですが)子どもたちの普段の暮らしの中で家畜との接点は皆無となってしまいました。つまりかつて家畜から吸収していたことが学べる機会が失われてきたということです。
家畜エリアには、ウマやヤギ、ニワトリ、ガチョウ、ウサギなどありとあらゆる家畜が飼われていて、私が訪れた際には、近隣の特別支援学校の子どもたちが、ウマの世話をしに来ていました。(毎週来ているそうです)。ウマの世話をすることで、五感やコミュニケーションへの刺激、責任感や信頼感が生まれ、「自分の何倍も大きな動物が自分を頼りにしてくれている」という感覚が子どもたちにの「自己肯定感」を養うんだそうです。
お隣のプレーパークゾーンもまたワクワクするような場所がたくさん!好きなものを調理できる野外炊事場や、子どもたちが建てた家の数々とそれらをつなぐ空中回廊自由な工作ができる工房などなど。夏休みには子どもたちで連日溢れかえるそうです。空中回廊にいたっては、日本の一般的な場所では問題になりそうなくらいの高さ、かつ手すりなし、さらにめちゃくちゃグラグラ(子どもたち手作りのため)ですが、そのままを大切にしているあたりが、この場所のスタッフがプレーワーカーとしての魂を持っている証であると確信しました。
日本では「子ども」農場と訳されていますが、実際は「青少年」農場と言った方が良いかもしれません。というのも、ティーンエイジャーもここに集って交流していたり、動物の世話をしたり、年下の子供たちの遊びを見守るプレーワーカーとして働いていたりします。今回施設内を英語で案内してくれた彼女も実は、この「子ども農場」で遊んで育ったんだそうで、とても誇らしげにこの場所を紹介してくれました。ここが子どもたちにとっての確かな居場所とアイデンティティーになっていることを痛感しました。
森のようちえんゾーンでは、現在2グループが毎日預かり型で活動。 いや、森のようちえんではなく「自然幼稚園( Nature Kindergarten)」と呼ばれている活動です。活動内容としては森のようちえんとの違いはありませんが、絵強いていうならば、森のようちえんはもっと木がたくさん生えている森でやっているくらいでしょうか。私にしてみれば(いや多分子どもたちにしてみても)十分と木は生えてはいますが、確かに深い森ではないですね。
朝の会を終えると子どもたちは自由に遊び始め、昨日から続く各々の活動やプロジェクトを引き続き始める子も。。途中、食事や手仕事の時間(自由参加)もありました。その間も農場ゾーンから来たニワトリが、自由に子供達がお弁当を食べている横を歩き回ったり、逆に子どもたちがヤギやウマに餌をあげに行ったりしていました。
子どもと家畜を中心に、ティーンエイジャーや大人たちが集い、異年齢同士が自然の中や家畜とともに育ち合う。そして自然や人、文化とのつながり、遊びと暮らしを自由に体験できるこの空間は、まさに自然の恩恵を受けながら「生きること、暮らすこと、楽しむこと」を身に付けることのできる理想郷でした。 家畜や暮らし、というキーワードが入った時点で大人だけでなく、おじいちゃんおばあちゃんも遊びにきます。だって暮らしの知恵は彼らの中に入っていますから。。。こうして「すべての人」が農場で、森で、自然や暮らし、そして人とつながっていました。
「子ども一人を育てるには村全体が必要だ」と言う言葉があります。ここはまさに私たち大人が置き去りにしてしまった子育てに大切な要素を取り戻そうとしている場所でした。
アカデミー敷地内に建設予定の森林総合教育センターが目指すべき姿やヒントが見えてきた貴重な訪問となりました。「森の空間を活かして、子どもたちの成長に必要な要素を意識すれば、自ずと多種多様な人(年齢やバックグラウンドなど)の関わりが必要となってくる。= つまり全ての人が森でつながる・森とつながる」「森+子ども=社会がより良い方向に向かう原動力」そう思いました。
他にもドイツ北部の町、プリーツ(Preetz)で、長〜いウェイティングリストがあるくらい人気の放課後の森の学校「Die Wh?lmause」も訪問しました。詳しくは12月10日(月)の報告会にてお伝えしようと 思いますのでお楽しみに〜!
なんちゃってせんせい 萩原ナバ裕作