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2018年11月08日(木)

グリーンウッドワーク指導者養成講座2018 ④器を作る

グリーンウッドワーク指導者養成講座、9月に実施予定でしたが台風で延期になり、11月に2回分まとめて開催しました。この講座、ふだんは私(木工教員の久津輪)と加藤慎輔さん(グリーンウッドワーク研究所)の2人で教えているのですが、今回はさまざまな人や団体と連携してみました。

まずは「器を作る」から。今回選んだのは「我谷盆(わがたぼん)」。かつて石川県我谷村(現在の加賀市)で作られていた、クリの生木を彫ったお盆です。これを選んだのは、グリーンウッドワークは単なる生木木工としても面白いのですが、地域の森林資源や工芸文化と関係づけて掘り下げてみると新しい面白さが見えてくるとお伝えしたかったためです。

講師には、一度は途絶えた我谷盆づくりを復興させた第一人者、森口信一さんをお迎えしました。

10時に講座開始。全国から集まった参加者が、森口さんのノミさばきを食い入るように見つめます。

器づくりの醍醐味は、何といってもみずみずしい木の塊を彫りあげていくことです。初めはザクザクと豪快に。

次第に繊細に、丸ノミの模様をつけていきます。

 

今年の指導者養成講座には、地方自治体の林務行政職員、森林総合研究所の研究者、造園業者、材木の流通業者、木工や木造建築の教員、木工家、建築家など、森や木に関わるプロたちが集まっています。今後の仕事にグリーンウッドワークを生かしていきたいと考えている方たちです。

 

プロの木工家もいるので、ちょっとチャレンジもしてみました。ふだん森口さんが実施する講座では下の写真で手前の女性が持っているような小さいサイズの材を使うのですが、今回の講座ではかなり大きめの材も準備したのです。みなさん必死に取り組み、1時間遅れたものの全員見事完成!
刳り物(くりもの=塊を削り出すこと)の魅力を存分に味わってもらえたことと思います。

一般向けに普及していく際には、道具や技法をもっとシンプルにまとめる必要もありそうです。今後の課題です。

 

今回の講座では、作るだけでなく「学ぶ」「交流する」ことに時間を割いたのも好評でした。
昼食時には、森口さんが出演した北陸放送のテレビ番組『幻のワガタボン』をみんなで視聴し、我谷盆の歴史を学びました。
我谷盆が作られていた集落は1965(昭和40)年に完成したダムにより水没し、技術が途絶えてしまったのです。それを復興したのが森口さんでした。
参加者から「ものづくりの技術だけでなく、その背景を学べたことが良かった」との声がありました。

北陸放送『幻のワガタボン』より

夜は、ほとんどの参加者が翌日の講座(森を見る)も参加するため、アカデミーの宿泊施設で学生が準備してくれた食事を取りながらみんなで交流。こちらも盛り上がりました。
私も、この夏に視察してきたイギリスのグリーンウッドワークイベント「スプーンフェス」の報告などを行いました。

 

「我谷盆」は日本伝統のグリーンウッドワークと評価され、来年3月にアメリカのノースハウス工芸学校でも実施することが決まっています。森口さんとともに技術指導にあたり、アメリカの方たちにも楽しんでもらおうと思っています。

 

久津輪 雅(木工・准教授)