自然からのGift「パーマカルチャーの現場から学ぶ」
パーマカルチャーの考えの一部である「フォレストガーデン」
フォレストガーデンとは、暮らしに利用できる様々な実りを持続可能な方法でより多く手に入れる為の森のデザイン手法です。実際に施工され、活用されているフィールドを見るべく現地へ飛びました。そんな実習での報告を学生がしてくれています。今回はボリューム満点だったので2回に分けてお届けします。
まずは初日から!
パーマカルチャーの現場から学ぶ@浜松(1日目)
『パーマカルチャーの現場から学ぶ』の授業で、Permaculture Design Labの庄司正昭さんの案内のもと、トランジションタウン浜松の現場を訪問してきました。その1日目の報告です。
「トランジション(Transition)」は遷移や移行という意味で、石油依存の消費社会から地域の人が協力しあう持続可能な社会への移行を意味しているそうです。トランジションタウンは、そういった「移行」を目指すコミュニティを指しています。
浜松では最初に、トランジションタウンのメンバーの一人である桑原佐紀さんのマルベリーハウス(桑原建設)を訪問しました。
マルベリーハウスに到着後、草木で彩られた素敵な庭が温かく出迎えてくれました。お話を伺う前に、まずはモデルハウスの全体を見学させていただきました。
広すぎず、狭すぎない洗練された空間のデザインがとても美しく心地よいと感じました。住む人の心に密着した設計がされていることが伝わってきます。
佐紀さんのお話を聞いていくと、無駄なく光を取り込んでいたり、どの窓からも緑が見えたり、冷房・暖房ともにそれぞれ1機だけで家全体を賄えるようになっていたり、柱や壁、断熱など、ほぼすべての材が土に替える素材であったり、様々なこだわりが秘められていることがわかりました。
建物内の見学後は、庭で取れたぶどうやブラックベリーを使ったジュースをいただきながら、庄司さんからパーマカルチャーの概観を教わりました。
私はパーマカルチャーというと農的な要素が強いイメージを持っていましたが、もっと包括的で持続可能なデザインの手法であることがわかりました。私としては、昔ながらの知恵も現代のテクノロジーも取り入れた上で持続可能な生き方の再構築を目指すパーマカルチャーの思想は、非常に惹かれるものがありました。
概観を学んで、美味しい昼食を頂いた後、佐紀さんに庭を案内していただきました。
パーマカルチャーのフォレストガーデンの考え方を取り入れた庭で、9つの階層に分かれていました。それぞれの階層から、様々な季節に食べ物を得ることができるように設計されていて、収穫の楽しみが庭先で身近に味わえます。また、食べものが得られる植物以外にも、薬用であったり、花粉を運ぶ虫が喜ぶ花が咲く植物であったり、等々、恵み(ギフト)にあふれた庭になっていました。手入れも丁寧にされていて、佐紀さんの愛情も深く感じることができました。
マルベリーハウスを出た後、同じくトランジションタウン浜松のメンバーの一人まおこさんが営む鴨家キッチンのフォレストガーデンを見学させていただきました。
まおこさんのフォレストガーデンでは、マルベリーハウスとはまた違った植物に出会えました。いろいろな植物を植えては育ちを観察し、試行錯誤を繰り返されている様子が伝わってきて、その土地にあった植物を見つける大変さと大切さ、そして面白さがわかりました。
また、立地の関係で通気性や水はけが悪くなっていた状態を、「大地の再生」と呼ばれる手入れによって解消しているというお話も伺うことができました。
空気や水の流れは、動物でいう血液の流れに等しく、それが滞ることで地力が失われるそうです。フォレストガーデンで実際に植物を植える前に行う、とても大切な行程とのことでした。
その後、お寺の境内をフォレストガーデンにしている正晨寺に訪問し、トランジションタウン浜松のメンバーと食事会をして1日目が終わりました。
この1日だけでも、パーマカルチャーの思想を中心としたコミュニティの暖かさや力強さを感じ、訪問以前に比べて、格段にパーマカルチャーの素晴らしさを感じることができました。
報告:菊池 拓也(森林環境教育専攻1年)
編集:新津 裕(森林環境教育教員)