自力建設のメンテナンス
自力建設は2001年の開学から続くクリエーター科の木造建築専攻のカリキュラムです。
つまりすでに17棟の自力建設が竣工しており、初期のころから数十年。メンテナンスが必要な施設も出てきます。
エンジニア科の林産業コースのメンテナンス実習の授業でそれらがなぜ傷んでいるのか、その対策は?ということで診断し、修繕していきます。
昨年のメンテナンス実習からの続きの4期生の「風の円居」と7期生の「ほたるの川床」です。
2班に分け、同時進行で進めていきます。
まずは「ほたるの川床」です。
ほたるの川床では、屋根がなく、雨や夜露に濡れて、木材の劣化が早い部分があり、有効に活用しきれていない一部デッキの縮小作業が入ります。
また、よく使用するデッキは、多少雨がかかりますが、赤身を選別し張っていく作業を行います。
このデッキはアカデミー内を流れる小川に少し張り出しており見晴らしがよいため、目の前の杉や桜の枝が少し邪魔になります。
ラダーを掛け、枝打ちを始めました。林産業コースとはいえ、1年次には一通り林業の実習があるため、お手の物?です。
さて、一方「風の円居」では腐朽が進んだ梁材を作り直す作業からスタートです。
夏休みの集中講義で「大工入門」をくぐり抜けた学生にとっては軽いもの?です。14年前の先輩の加工部材を見本に墨付けして手加工で刻んでいきます。
調子よく「腰掛け蟻」を加工できました。
さて、実際に入れてみると、
少し合わないところがあり、再度加工です。
無事、新規部材が入りました。あとはデッキ貼りです。
デッキの端部を処理して完成です。
一部リユース材を混ぜつつ、デッキのメンテナンス完成です。
もう一方の「ほたるの川床」でも新設のデッキが完成です。どちらも前に桜の木があり、花見のシーズンにも活躍しそうです。
メンテナンスをすることで、木造建築のどこが劣化しやすいか、その原因はなにかを考え、では対策としてどのように考えるか。またメンテナンスしやすい作り方はどうするか、素材は何を使用するかなど考える良いきっかけになります。
今回はアカデミー演習林からの杉、桧を製材して利用しましたが、建材関係で、10年後には製造していなければ、全面取り換えるしか方法がありません。数十年後も手に入るオープンな素材の選定も長寿命の方策の大きな要素です。
准教授 辻充孝