教員お気に入りのアイテム3:「伐倒方向の確認道具」杉本和也
今日はアカデミーで行う伐採実習などで使う伐倒方向の確認工具を紹介したいと思います。受け口を作成した後、伐倒方向を見て狙い通りになっているかどうか確認するのは重要な作業です。チェンソーのガイドバーを当てたり、木の前に立って方向を確認したり、いろいろあると思います。今回は、方向の確認時に活用できる道具を紹介します。
まず伐倒作業時の簡単な説明から。伐倒する際に、受け口を作成しますが、受け口の方向は伐倒したい方向に向けます。下の図で説明すると、斜切りと水平切りが交わる会合線に対して直角方向が伐倒方向になります。基本的には会合線に対して90°の方向が伐倒方向になるように、受け口を作成します。
さて直角を測る道具がない場合は、立木の前に立って、人の目で直角を見るなどして方向を確認するわけですが、「だいたい伐倒方向いいんじゃない」とか「ちょっと右かな」などアバウトな表現になりがちです。正確に伐倒方向が狙い通りになっているか確認するため、次のような道具を使っています。
① ずれ確認器具(平地での練習向け) cm単位でずれが分かる!
② 差金 直角はお手の物!
③ 折れ尺 方向確認以外にも使え、持ち運びが便利!
④ 方向確認器 自作でお手軽!
① ずれ確認器具(平地での練習向け) cm単位でずれが分かる!
これは緑色の画板に水糸を取り付けたもので、受け口を作成した後、斜切りと水平切の会合線に画板当てて、水糸を伐倒方向の目標地点まで持っていきます。そして、水糸が画板に対して直角になる位置まで水糸をずらします。そうすると、目標地点から伐倒方向が何cmずれているか計測することが出来ます。
山ではなく、平地で模擬的に伐倒練習を行う際に有効な道具で、正確に受け口を作成する練習に役立ちます。「だいたい○mくらいずれているよ〜」という感覚ではなく、正確に「○cmずれている」と数値で表されます。皆競い合って、誤差0cmを目指すので、とっても面白い練習になります。
この方法は、JLC日本伐木選手権に出場する選手たちが練習やプレ競技で取り入れており、アカデミーの学生がJLC日本伐木選手権に向けて練習する中で、教えてもらいました。ちなみにJLCの本番ではレーザーで測定していました。レーザーも同様の方法としてあり、試したことはありますが、赤色にしろ緑色のレーザーにしろ現場で見にくいので現在は使っておりません。なお、まだ試してはいませんが、株式会社スチールから「2-in-1 レーザー」というチェンソーに取り付け可能なレーザーが販売されており、伐倒方向を確認する事ができます。
② 差金 直角はお手の物!
これから紹介する3つは、平地での練習でも山での実際の伐倒作業にも使えます。まずは差金。
曲尺、金尺とも呼ばれますが、主に大工作業で使う道具で簡単にホームセンター等で手に入ります。使い方はそのままで、会合線に差金の短い方を当てて方向を確認します。差金は確実に直角が出ているので、方向を確認しやすいです。サイズは長い方が約50cmのものと、30cmのものがあります。50cmの差金は方向の確認はしやすいのですが、持ち運びに難があります。より持ち運びしやすいのは、次の折れ尺です。
③ 折れ尺 方向確認以外にも使え、持ち運びが便利!
続いて折れ尺です。こちらもホームセンターで販売しています。
会合線の両サイドに合わせることで、伐倒方向が分かります。コンパクトに収納できるので、持ち運びも苦になりません。また伐倒木の傾きの確認や直径の測定などにも使えます。
④ 方向確認器 自作でお手軽!
続いて、こちらは立木乾燥法の梶本さんに教えて頂き作成した方向確認器です。ものさしを2個使って作成したものです。方向指示部分はものさしをハサミで切って三角に加工していますが、100円ショップでものさしを2個購入し、加工するだけなのでとてもお手軽です。
腰袋に入れたり胸ポケットに入れて運べるので、とても便利です。
以上、4つの道具を紹介しました。それぞれ状況に応じて使い分けしながら使っています。差金、折れ尺、方向確認器は傾斜のある実際の山でも使えますが、伐倒方向に人が立ってもらい(受け口作成後の話で、追い口作成の時は当然ダメですよ!!)、右に向いているのか、左に向いているのか、指示してもらうと尚、効果的です。現場では他にもいろいろな方法で確認しているかもしれません。またいい方法があれば紹介したいと思います。いずれにせよ、正確に受け口を作成することが重要ですね。
杉本 和也 | |
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専門分野 | ・森林空間の利活用 ・森林環境教育 ・森林施業と安全管理 |
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