そびえ立つ!洗い場ポール誕生のあゆみ(自力建設「里山獣肉学舎」建方後半レポート)
自力建設プロジェクトとは、木造建築専攻の学生が中心におこなう、建物を1年かけて計画・施工する授業プログラムです。
今年は、獣害対策実習で捕獲したシカやイノシシなどの野生動物を、食肉として解体する「里山獣肉学舎」(実習場)を建設します。
今回の自力建設は建物のほかにも重要なパーツがあります。
それは、“洗い場ポール”です。
捕獲した野生生物は、解体前に“洗い場ポールに”つるして洗浄します。
なぜこの“洗い場ポール”が重要かというと、棟梁(学生代表設計者)の思いがこめられているからです。
それは、「今回の自力建設の建物が、獣害について学ぶきっかけとなり、里山で起きている問題に関心を深めていく拠点になってほしい」という願いです。このシンボリックな2本の丸太には、建物が稼動していないときにも、メッセージを発信するという役割があるのです。
しかし、この洗い場ポールをめぐり、学内で議論がわくことになります。
「おおくの人にとって、動物の解体は馴染みがないもの。解体施設があるというだけで、戸惑う近隣住民や学校来訪者がいるかもしれない。大きな塀で建物を隠して、建物も作業も、人目に触れないようにしたほうがいいのでは?」という意見が学内からあがりました。
予想していなかった反響に、私たち建築専攻の学生は戸惑いました。
「獣害対策の必要性を外へ発信する建物なのに、隠してしまったら意味がないのに…」
でも、よくよく考えてみると、いろんな考えを持つ人が集まるアカデミーで、かたちの残る建物をつくるのに、自分たちだけの考えだけで進めることはできません。
やりたいことをみんなに支持してもらえるように、自力建設への思いを話し、運用上の懸念事項の解決策を示すことが必要なんだな、と気づきました。
そして各所に足を運んだ末、洗い場ポールを建設できることとなりました。
嵐を呼んだ洗い場ポールですが、無事完成することができそうです。
今年の猟期中に解体実習ができるように、建屋工事もピッチをあげて進めていきます。
木造建築専攻 1年 大上