暮らしをメンテナンスする。(パッシブデザイン設計法 第6回)
専門技術者研修「パッシブデザイン設計法」の6回目。長かった連続講座もいよいよ最終回です。
最終回は暮らしをメンテナンスするステップ9と総合的に多角的な視点で検討するステップ10です。
ステップ9では、温湿度の測定からエネルギー消費量の分析です。
いくらいい家を建てても、暮らし方が悪いと結露によって劣化が進行しますし、寒いのに我慢して暮らしていると健康を害してしまいます。
そこで竣工後に温湿度環境を実測することで、適切に暮らしているかしっかり確認します。
雨漏り、水漏れ、シロアリ、建具のがたつきなど、メンテナンスを行っている建築実務者は多いですが、暮らしのメンテナンスをされている実務者はまだまだ少数。
ここをしっかり押さえることで、信頼関係が持続します。
実習では、私の作成した環境家計簿をもとに、いろいろな住まい手の光熱費から、暮らしを分析していきます。冬になると異常に増える深夜電力・・・蓄熱暖房機が悪さして、エネルギー性能が落ちてしまっている事例。
夏でもほとんど電気使用が変わらない住まい・・・冷房を使ってません。
一人暮らしの高齢者の住宅では、一年を通して、一般的な一人暮らしの数倍は使っている事例。春や秋も多いので家電、おそらく大画面テレビの使用も多く、床暖やエアコンもしっかり使ていると予想。
と、家計簿からいろいろなことが読み取れ、どんな暮らしを提案するかをいろいろ考えさせられます。
ステップ10では、総合力を高めていくための、いろいろトピックです。中でも興味を引いていたのが光のスペクトル分布。
蛍光灯では、省エネのために中間色を無くし、RGB(赤、緑、青)の光の三原色を中心に発光して、色合いを作っています。そのため、どこかきつめの発色になり、物が美しく見えません。
一方、太陽の光はスペクトルが非常に豊かで、中間色の光もしっかり来ています。同じ省エネでも、効率の良い照明器具ではなく、昼光利用を中心に計画すると豊かに生活を彩ります。
では、最近普及が著しいLEDはどうか・・・。太陽光ほどのスペクトルは出ませんが、蛍光灯よりはマシといった感じ。省エネ性能も高いため、これからの照明はLEDが主流になってくるでしょう。
ただ、いろいろなLEDを計ると。青色が極端に出ているものもあり、LEDは光の質は相当ばらつきます。
最後は、これまでの講習の復習を兼ねて、建物を一通り計算して、室温予測まで行いました。
蓄熱を増やしたらどうなるか、断熱を向上させると、暖房を入れると、などなど様々なパターンを検討して最適解を自分で探します。
もちろんこのツールを手に入れるためには、宿題が待ってます。最終回の宿題はいつにも増してボリュームが大きいです。
これまでの復習もかねて頑張りましょう。
全6回、各回6時間講習。しっかり勉強した成果をぜひ実務で活かしてください。
准教授 辻充孝