足元の宝物を未来につなぐ(山村資源利用演習 第2回目)
<2024.9.26> 山村資源利用演習 第2回目を実施しました。
第2回目は、揖斐郡町春日を訪れました。
「山村資源利用演習」はエンジニア科2年・林産業コースの授業ですが、今年はクリエーター科の1年生、2年生も参加してくれました。「山村資源を活かす人の、生きざまに会う」ということをテーマにしている本科目に、社会人経験者のクリエーター科学生が参加してくれるのはとても嬉しいことです。
今回の講師は、四井智教(しい・とものり)さん。
薬草の里として知られる春日の資源を活かし、商品開発などを手がけています。

四井智教さん
四井さんが、春日の地域に興味を持ったのが9年前。薬草や地域にまつわる歴史など、”足元にある宝物”に気づいてからだそうです。愛着を持った地域を未来につなぐため、新たに「合同会社 いびはる商舎」を2024年に創設。町から施設の指定管理を受け、5月から「はるひの案内所」を開設しました。
「ここを”地域のこしの拠点”にしていきます」

春日観光案内所兼農産物直売所「はるひの案内所」
この日、四井さんといっしょに地域を案内いただいたのが藤原まりこさん。揖斐郡池田町で「柿渋と薬草のお店」を経営されています。春日の薬草農園を義叔父さんから譲り受けた藤原さんは、マダニとヤマビル対策に苦慮されています。
豊かな薬草文化を育んできた土地ですが、地域の事情を聞くと、獣害の他にも、地域の高齢化と自然環境の変化による課題が深刻になっていました。

雪崩による農園の被害を説明する藤原まりこさん
春日の地域を案内いただきながら、薬草を育てている農園の整備を手伝わせていただきました。四井さんの叔母で、薬草生産者の藤田絹美さん(通称:まるちゃん)から、薬草と農園の整備について一緒に作業をしながら教えていただきます。

「まるちゃん」こと、薬草生産者の藤田絹美さん

「和のタイム」とも呼ばれるイブキジャコウソウ

作業をしながら薬草を五感で感じる
畑や薬草農園が山の上にあるこの地域では、地域のみなさんそれぞれが、作業小屋を現場につくるそうです。
見晴らしが素晴らしい、立派な小屋でお昼を取らせていただきました。

美味しいウリの漬物もいただきました
昼食後、「はるひの案内所」に戻り、四井さんが商品化した「ぎふコーラ」を体験しながら、お話をうかがいます。
「”地域のこし”は、”地域おこし”ではないんです。地域を残したい、というのはもちろんみな同じですが、頑張りすぎて疲弊する姿も見ました。だから、”地域おこし”というと、起こしてほしくない、という声もたくさんあったんです。」
「何かをやりたい気持ちが残っている人を、どうサポートできるか。関わり代を意識しています。まずは聞くこと。想いを語ってくれるのは素晴らしいことで、そこにヒントがあります」
そんな想いを込めてオープンした案内所ですが、まずは地域の人に知ってもらうことに苦労したそう。とにかく一度来てもらえるように声をかけたり、広報物をつくって配ったりしました。薬草を飲みながら楽しむ「健康マージャン」を始めたところ、手応えがあったとのことでした。
まず地域内に周知を図りながら、今後は薬草をつかったお茶づくりなど、外の人と交流するプログラムづくりも手がけたいと、四井さんは言います。
実際に、今回はじめて春日を訪れたアカデミー生は、薬草農園の整備をしたり、薬草の味を現地で味わったりしたことで、この土地や四井さんたちの活動に興味を持ち始めていました。アカデミーの視点で、何ができるのか、どうすれば山村が残るのかなど、様々な思いが生まれ、四井さんたちとのセッションになっていきます。
学生の話を聞きながら、四井さんからは、これからの活動についてこう話されました。
「今ある恵みは、昔からこの土地をつくってきた人々の努力があったから。”薬草の村”という知名度も、先人の方々が築き上げたもの。土地の人がつくってくれた資産です。だからこれからは、この土地を大切に思ってくれる人が増えるといい」
山村資源である薬草、そして地域の施設の活用など、地域にある資産を活かして地域の未来を見出していく新しい取り組みーー「地域のこし拠点」は、これまでにない新たな挑戦です。
アカデミー生も、森林文化の切り口から社会課題にアプローチできるよう、それぞれが日々学んでいます。新しいことへの挑戦について、四井さんからアカデミー生にメッセージをいただきました。
「社会性と経済性のバランスが必要です。自分たちの仕事についても、大事にしていることをしっかり伝えることが大切です。人から何を言われても、きちんと答えられる、そのための”自分の軸”は大事ですね」
人々の想いにストーリーをつける、そんなデザインが好きという四井さん。デザインは、想いやメッセージを他の人が受け止められるようにする作業です。先人がつくってきた地域の資源に感謝しながら、土地をつくっていく次の世代につなぐために今必要な”バトン”を、四井さんはデザインし始めています。
山村資源は、長い時間をかけてつくりあげられたもの、そして時代に合わせて新たに生み出されていくもの ーー 山村資源を活用するには、その両方にアプローチする姿勢が大切だということを学びました。四井さん、みなさま、ありがとうございました。
<森林環境教育専攻 小林謙一>