学生主催。「島根スタディーツアー報告会」を名古屋で開催しました
<2025.3.24>「島根県スタディーツアー報告会」を開催しました。
昨年6月、「教育のまちづくり」で訪れた島根県。たくさんの学びがあり、当時私たちはなかなか消化がしきれませんでした。
(当時のレポートは、こちらをご覧ください)
スタディーツアーに参加したクリエーター科2年・林業専攻の梅村成美さんも様々な気づきがあったようで、スタディツアー終了後、いろいろな人に伝える場をつくりたいという想いを抱きました。

報告会を企画した梅村成美さん。島根県でのスタディーツアーにて(2024年6月)
半年以上の月日が過ぎ、ついに「報告会」の開催を実現。その会場はなんと、名古屋駅前の「大名古屋ビルヂング」です。

アカデミーの森を抜け出し、都会の真ん中へ
この14階に、大手オフィス家具メーカーの(株)オカムラ様が運営する共創空間「Innovation Biotope “Cue”(キュー)」があります。スタディツアーに参加いただいた、河田佳美さんが運営を手がけているという御縁で、この素敵な場所をお借りして開催することとなりました。
「Cue」は様々なワークショップやイベントが行われていて、企業や大学生など多様な人々の交流と新たなプロジェクトが生まれる場所になっています。また、”オカムラが提案するオフィスデザインの最前線”に触れられる場所でもあります。共創空間は名古屋を含め、全国で4ヶ所あるそうです。

共創空間「Cue」。対話を生み出し、新しい発想を得るための様々なアプローチが導入されている
この日は、「教育のまちづくり」の講師を務めていただた(一社)コココラボの伊藤大貴さんが、多忙の中進行役として駆けつけてくださいました。
またアカデミーからは、梅村さんの課題研究主査の塩田先生、森林環境教育専攻の谷口ゴロー先生、梅村さんの同級生の後藤さんが参加。
「Cue」を運営する、久岡さん、小倉さんも参加くださり、贅沢な報告会がスタートです。

企画に協力いただいた、河田佳美さん(中央・右)と伊藤大貴さん(写真中央)
いよいよ、梅村さんの報告。この日のために改めてツアーをふりかえり、自身の気づきを今一度深堀りし、プレゼン(大作!)にまとめました。
スタディツアーの中で益田市に焦点を絞り、なぜ益田の人々がいきいきとしているのか、益田ではなにが起こっているのかについて、あらためて考察。「ひとが育つまち、益田」で感じたインパクトについて、現地で出会った3人を中心に整理していきます。
1.谷上さん(谷上元織さん:「シャカイノマド。」主催)
2.大畑さん(大畑伸幸さん:「ひとが育つまち、益田」をつくった中心人物)
3.カオルくん(大庭 馨さん:益田市出身の大学生)
(※それぞれの方については、アカデミー活動報告「ひとが育つまちは実在する?〜「教育のまちづくり」in島根」をご覧ください)
益田のひとびととの出会いから、梅村さんは次のようなキーワードを見出していきます。
・人と人とのつながりを増やす人
・人のわくわくを増やす人
・「またね」の関係づくり
・大人の本気がこどもを動かしていく
・本音の連鎖
・「自分がいいと思ったことをやっただけ」
・こどもの熱意が大人を動かしていく
スタディーツアーの経験は、梅村さんの課題研究に大きな影響を与えたそうです。
「人と人が出会って、<お互いが変わる>ということを実感しました。想いを届けることの大切さや、そのための場づくりが必要なのではないか、とぼんやり思っていたことが間違いなかってなかったんだと、益田の方々に会って、勇気づけられました」
梅村さんはスタディツアー後、課題研究として「木を使っていくれるひとに、森を知ってもらう」を目的とした調査や体験交流イベントを実施しました。(参考:梅村さんの課題研究「川上と川下が繋がり、森の価値向上のために必要なことを探る」要旨)
自身の研究を後押ししてくれた言葉にも、益田で出会えたそうです。
「課題研究で何をやろうか、悩んでいた時に、カオルくんの「自分がいいと思ったことをやっただけ」という言葉が刺さりました。それでいいんだ、というのも、カオルくんから教えてもらいました」
さらに、益田市で感じたことを整理していると、アカデミーでの学びのスタイルとも共通点がある、と梅村さんは言います。
「アカデミーでは、対話の場が多くあり、学び合う関係があります。学生と教員の関係も近く、やりたいことがあれば一緒になって「やろう」「やってみよう」となっていく、そんな”わくわくの相乗効果”があります。何かをする時、助けてくれる同級生もいて、挑戦すること、”やってみることへの身軽さ”がありますね」
最後に、3月一杯で卒業を迎える梅村さんの次の”やりたい”を発表してくれました。
「これからの山のために、こんな場があるといいな、と妄想しているんです(笑)。バーカウンターがあって、林業従事者と、木を使う人が肩を並べながら、気軽にワクワク、たまには真面目な話をしている。そこにいるのが私だったらいいなーと。こういう風景を見れたらいいなと思っています」
終了後、短い時間でしたが参加者全員でディスカッションが行われました。
益田市のことを聞いて自身の身近な地域のことを考えたり、組織の中でどうすれば互いに勇気づけができるのかなど、話題は多岐に渡っていきます。まだまだ益田市で見聞きしたことは伝わりきっていませんが、ワクワクするひとが育ち合う環境が益田にはありそうだ、ということは梅村さんの報告から十分に伝わったようでした。
報告会を無事終えた梅村さんからはこんな感想が。
「報告会のタイミングがとても良かったです。まずスタディーツアーの後、その経験を生かして課題研究でイベントを行ったことで、あらためて島根での学びと自身の学びを繋げることができました。そして今、その学びを誰かに伝えようとまとめることで、学びをもう一段階深めることができました。就職直前だったので、これからやりたいことを深める機会をいただけました」

終了後、「Cue」の上岡さん(写真左)と意見交換する梅村さん
「自分の発表が、他の人の学びに繋がったのか不安」という梅村さんでしたが、河田さん、伊藤さんからは、こんな嬉しいコメントをいただききました。
「梅村さんの報告を聞いて、自分たちも気づいていなかった新たな気づをたくさんもらいました。「教育のまちづくり」自体がすごく幅広く、いろんなことに絡ませて、様々なアクションが起こせるのではないかと思いました。次のアクションのための作戦会議をしたいです」

梅村さんの報告の後、「対話の時間」を進行する伊藤さん(写真右)と河田さん
梅村さんの報告を聞きながら、私も様々な想いを巡らせていました。
<学びには、発酵と熟成の時間も必要>
学校という性質上、授業の枠内で経験をすぐに本人の学びに落とし込みたいという欲求が教員側にあります。また実社会においても、業務上の視察や研修で得た経験について、その意義や効果をすぐに定義したくなる、または周囲から定義を求められるということが頻繁に起こります。
しかし、スタディツアーのように人や場など多様な経験から得た気づきには、その場で言語化できるものもあれば、どうしても表現できずモヤモヤを抱えたままその場が過ぎていくものも多々あります。
あらためて、スタディーツアーには、次のようなサイクルが必要ではないかと考えました。
1)学習者全員が同じ体験をする。(偶然も大切に、密度が濃いことも許容)
2)モヤモヤを許容する。その場で咀嚼しきれないことを前向きに捉える。
3)<学びの発酵と熟成>に応じて、適宜ふりかえりをして、気づきを学びに変える。
4)学びをカタチにするための「報告会」を行う。
そして、これらを成立するためには、「学習グループ(成長し合う仲間)」の存在が重要になりそうです。
報告会の際に、「Cue」を運営する、(株)オカムラ様のオフィス見学もさせていただきました。
最も目を引いたのが「OCポータブルバッテリー」。オフィスではフリーアドレスが徹底されていますが、「どこでも好きな場所で仕事ができる」ことをさらに推し進めるために、電源からもフリーにしようとモバイルバッテリーで仕事をするというスタイルを実践している、というのは驚きでした。「仕事をするには、パソコンをコンセントに繋いで使う」という常識を破ることで、オフィス空間の考え方、働き方のカルチャーも変えるインパクトがありそうです。モバイルバッテリーを使うことで、無駄な配線を減らすことにもつながるそうです。
都会と森をつなぐためには、都市部で働く人の考えや感覚を、森につなぎたい私たちが知る必要があります。ビジネスを生み出す最先端の職場デザインとその考え方に触れることができたことも、とてもありがたかったです。

ポータブルバッテリーは自由に移動して作業をするワークスタイルを提供。バッテリーを2台使えば大型モニターにも給電できる
今回、「Cue」を訪問したこと、そしてそこでアカデミーの報告会を実施させていただいたことは、これからの学びのあり方を考えるための大きなヒントになりそうです。社会課題という正解の無い問いに向き合う人を社会全体で育くむには、様々な人がつながり、共創を生み出す必要がある−−学校や地域、企業がつながり、チャレンジしている現場に伺わせていただいたことは、とても刺激になりました。
貴重な機会をいただいた、河田さん、伊藤さんありがとうございました。
そして、報告会をやりたいと発案し、みごと実現した梅村さん、本当に素晴らしいです。ありがとうございました。卒業後も「成長し合う仲間」として、互いの探究を深めていきましょう。

参加者全員で記念写真
【おまけ】
「Cue」には会場全体を収録できるカメラとマイクが常設されていて、報告会の全容を動画収録いただきました。ありがとうございました。
せっかく動画で記録されているので、「動画で記念撮影」に挑戦。みんなでジャンプ!の記念撮影をさせていただきました。
<森林環境教育専攻 小林謙一>