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2025年03月10日(月)

「簡易製材とチェンソークラフト」

身のまわりのモノや食べ物が生まれるまでの「プロセス」を自らが体験したり、その体験を提供したりすることは、環境教育の基本ともいえます。

「木製品は、森から生まれている」と頭で理解するよりも、森の中で育つ1本の木が、目の前で伐倒され、丸太になり、それが角材になり、モノへと変化していく体験をする方が、身体全体で理解することができ、その人の行動変化にもつながる大きなインパクトを与えると信じているからです。

またこのプロセスの中で自らが手を動かし、チェンソーを使って細かい作業をすることで木の感触や重さ、香り、削り心地、繊維の方向、木という素材の特性などなど、多くの情報を知識ではなくしっかりと体感することもできます。

環境教育の指導者を育成する大学や施設がたくさんある中で、こんな体験が当たり前にできちゃうのも、森林文化アカデミーならではの実習ですね。

ロゴソールというチェンソー 簡易製材器による製材と、丸太で椅子やベンチを作るチェンソークラフトの実習授業について、「みかほ」こと森田水加穂さんが報告してくれたので以下に紹介しますね。

ここまで
なんちゃって先生 萩原ナバ裕作 

 

****ここから森田さんの報告 *****

森林環境教育専攻1年開催の授業、「簡易製材とチェンソークラフト」。林業一筋で生きてこられ、人生経験豊富で、とても穏やかで、深みがある、伊佐治彰祥さん(現モリノス職員、元アカデミー教員)に温かく見守られながら、2日間みっちり実習しました。

環境教育に携わる人たちだからこそ、それぞれの現場にある原木を、自分で加工する技術が身につけることができれば、できることの幅がかなり広がっていきますよね。現場のフィールド整備も、「ほしい!」と思ったものを自分でつくることも可能。何より、自分(たち)で自分の生活を組み立てていけるって、とっても自然でしあわせなことなんじゃないかなと思います。きっとそんな経験をしてほしいという願いが込められているだろう(?)「簡易製材」の授業、2日間の中で、「簡易製材機による、丸太の製材」「製材した材を使ってのログベンチ・スツールづくり」をしました。

今回使用した簡易製材機は「ロゴソールM8」と呼ばれ、海外で生まれたようです。1人で運び、森で製材・加工して、運び出しまでできる!がコンセプトのよう。そのコンセプトに沿って(?)、1人で簡易製材機に丸太を乗せてみようミッションが伊佐治さんから言い渡されました。道具やてこの原理を使って、なんとか乗せることができました。(そして、使いたいときに丸太が近くにあるというアカデミー環境、ありがたい。)

乗せられたので、さっそく製材。切り出したいラインで切れるよう、計算しながらセットしたのち、製材しましたが、あっという間に切れました!

その後はログベンチ作成!土台になる足の床面の切り出し。チェーンソーを横にして使ったことのない私はめちゃめちゃ手がプルプル震えました・・・(笑)

次に、座面と土台の木が組み合わせられるよう、調整しました。この作業がめっちゃ難しい。まず、水平になるようにするのが難しい。水平の地点をマークする(スクライビング)のも難しい。マークしたものをチェーンソーで切り出すのも難しい!!(木工で生きている人たち、大工さんってすごいなあと、何度も思いました。木工専攻、木造建築専攻の仲間も改めて尊敬のまなざしです・・・)

最後にくぎで固定したら、かんせ~い!!

やってみての感想を赤裸々に書いてみます。

 

◆自分でやってみることの喜び

私はこれまで自分の専門外のことは、専門家に任せればいいと無意識に思いながら生きていたと思います。困った時は助けを求めて、周りの人に助けてもらう。それでいいじゃないか、と。保育者として生きてきて、教育に携わるNPOに属してきて、人とかかわることは好きでも、それ以外のことは知らないことばかりの自分。自分とそれ以外のことを分断して捉えていた気がします。

最近、パーマカルチャーの講座を受講し、いかに自分が、外の世界に無知であることを知り、ショックを受けました。環境問題のこと、資本主義社会や経済のこと、苦しんでいる人や闘っているたちのこと。「さまざまな課題が起きていても、“誰かがどうかしてくれる”とのほほんと思っている現代人が多い」という話題が出たのですが、それはまさに自分じゃないかと。以降、これまで見てこなかった外の世界を見てみようと思うようになりました。外に目を向けてみると、素朴でも、自分の暮らしを自分で創り上げている人たちがいることに気づき、彼らがまぶしく見えるようになりました。そして、私も、これまでやってこなかったことをやってみて、「できる」を増やして、何かを創り上げる“生産者”になりたい、と。

今回、伊佐治さんから「今はたくさん人がいるから、分業したり協力したりして、できちゃうことが多いでしょう。でも、これは1人でできることだから、1人でなんとかしてやってみましょう」と提案してもらい、時間をたっぷり使わせてもらいながら、丸太を製材機の上に乗せる活動をしました。自分なりに考え、現場にある道具を使ってみて、やってみて(伊佐治さんのアドバイスもたくさんもらいましたが)…。何かに頼り切らず、1人でやり切れたら、なんだかとっても嬉しいし、喜びを感じました。何かが「できる」って、やっぱり嬉しい。

現代では、手取り足取り教えられること、効率を考えて最短でできることを求められることも多いけれど、人間何かに頼らなくても、もっと自分でできるほどの能力や可能性をもともと備え持っている。ただ、できるまでに時間がかかることが多いこともある。・・・現状の教育現場を考えると、もっともっとその人がやり切ることを保障したいし、時間ももっともっとたっぷり確保したい、と思いました。

 

◆最後まで、こだわってやってみること

私は苦手なことに関して、6割できたら満足。「ま、いっか」で終わることが多い人間です。できなくても、「しょうがないか」とあきらめたり、誰かにやってもらったりすることも多い。なのに、今回、水平を出すときに、なぜか「ちゃんと水平を出したい!」と思えた私。たぶん、伊佐治さんや仲間との会話で、競争心(?)が生まれ、「やってやろう!」と思えたんだと思います。

そのときの、私のいつもと違った集中力、諦めない心。そして、自分が自分である感覚。向き合っているとき、私は「無」を感じるけれど、雑多な考え事をしなくてもいい感じ。心地よい時間が流れていました。うまく水平を出せず、焦ることも多々あったけれど、いろいろ試してみたり、伊佐治さんに声かけてもらったりしながら、(昼休憩を返上して)なんとか納得するところまで作ることができました。誰かに何か言われたわけでもないけど、なんだか嬉しい時間でした。

 

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伊佐治さんの、豊富な経験からにじみ出る専門性と、的確なアドバイス、時間管理や安全管理のもと、安心して、活動に取り組むことができました。ありがとうございます!成果物として、ログベンチができたのも嬉しかったです。お家のベランダでのんびりひなたぼっこするときに使おうと思います^^/

まさにアカデミーが提唱する「現地現物主義」!な授業でした。