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2025年02月14日(金)

木造住宅の強・用・美を学ぶ「岐阜県木造住宅アドバイザー・相談員養成講座」2024年度全講座修了

岐阜県では、県産材を使いながら、真っ当な木造住宅をつくる技術者を育成するために、2006年(19年前!)から「木造住宅アドバイザー養成講座」を開講し、さらに2012年(13年前!)からは、住宅建設会社営業職のスキルUP講座として「木造住宅相談員養成講座」を開講して、合計500名以上の受講生を認定しています。

なかなかすごいことですよね。
森林率81%で、白川郷や郡上八幡や美濃の建築文化をもつ岐阜県が、いかに木造建築の担い手育成に力を入れてきたか、よくわかります。

今年も盛況のうちに全講義が修了した両講座の様子をお伝えしていきます。

松井匠准教授によるオリエンテーション「木造住宅アドバイザー・相談員の役割」

初日はオリエンテーションから始まりました。
「強用美を備えた木造住宅」と題し、森林文化アカデミーの松井准教授から、この講座の目的、なぜ今木造住宅をつくることが良いのか、強用美を目指すべき理由、そのために用意された今年度講座のついて、全体概要の説明がされました。

吉野准教授と石原講師による「木材の強度について(強度試験の体験)」

 

 

オリエンテーションの後は、アカデミーの実大開放試験室で、木材の強度実験を体験します。強用美における「強=性能」ですね。確かな性能の上に、用=機能性、美=意匠性が乗ってきます。木構造に使われる木材が、実際に加力されて折れる場面を、実感として知るのはとても大切です。

見学「木材集積士場(丸太の価値)」

2回目は見学。木造建築は森林と切り離して考えてはいけません。山から出してきた丸太が、どのように木材になっていくのか、見学から学んでいきます。岐阜県には大規模な工場から、小規模な製材所まで数多くの木材産業があり、いわゆる「川中」を間近に見ることができます。自社の設計で使いたい材や、取引したい会社があったかも。

見学「長良川木材事業協同組合」

見学「美濃建築製品センター株式会社」

小原教授による「木造住宅の耐震と構造計画の基本」

3回目は、木質構造専門の小原教授による、住宅の耐震の基本の話。
材の強度をきちんと活かすには、どのように構造計画を考えればいいのか、基本的なところから講義で学びました。 実務の中でなんとなく知っていた知識も、基礎からきちんと腑に落ちることが大事です。

WOOD AC河本氏による「木材強度、含水率、構造金物の話」

木材は水が含まれているので、乾燥の度合いや手法によっては曲がったり、弱くなったりします。また接合部といって、木が組まれる部分はどうしても弱くなるので、補強する金物についても知っておく必要があります。WOOD ACで構造設計をしている河本氏による座学。これも「強」の学びですね。

松井匠准教授による「木造住宅のデザインと真壁の架構」

4回目は、木造住宅の架構のデザインについて、松井匠准教授の実習です。
木造住宅の伏図を手描きで描くことで、骨組みから計画していく感覚を身につけます。柱や梁のみえる真壁造は、川上や川中の技術や志がそのまま乗った空間をつくることができます。各自が二階床伏図と小屋伏図を描いて、身体で真壁の架構を理解していきます。「強」と「美」の講座です。

辻教授による「心地よいエコハウスのつくり方~温熱環境と省エネ性能の両立~」

続いて、温熱環境を専門にしている辻教授の、心地よいエコハウスのつくり方講座。
日本の木の家は、これまでよりはるかに高い断熱気密性能に向かう必要がありますが、ただ断熱して一定の温度域で暮らすことが、人間にとって豊かで心地よいとは限りません。本当に心地よく省エネで豊かな生活はどう実現していくのか、辻先生よるわかりやすい座学で学びます。「強」「用」の学びですね。

WOOD AC塩田氏による「木造住宅の基礎講座」

この日は相談員講座の最終日。
営業職に向けた木造住宅の基礎講座を、アカデミーの卒業生でもある塩田設計士から学びます。

小原教授と辻教授による「グループワーク 日々の疑問をクリアにするQ&A」

営業職の方々の日頃の疑問を、グループワークでまとめて発表してもらい、辻・小原教授が答えていきます。

相談員はこれで修了。よく見ると、最新情報が欲しいということで、ベテランの設計士も。リピーターでした。

あすなろ建築工房関尾英隆氏「暮らしに寄りそう家づくり

あすなろ建築工房関尾英隆氏「暮らしに寄りそう家づくり

アドバイザーの最終回は、横浜からはるばるお越しいただいた、特別講師「あすなろ建築工房」の関尾英隆氏の講演です。
「あすなろ建築工房」は横浜の有名地域ビルダーで、関尾社長は雑誌やメディアを賑わしながら、自らYoutubeチャンネルで発信を続け、11000人以上の登録者数を誇ります。
20人以上のスタッフを抱えるという、経営者としても一流の関尾さんによる講演は、「暮らしによりそう家づくり」。 400枚のスライドを澱みなく話されました。たくさんの実例を交えながら、具体的な手法を惜しみなく紹介され、深い学びがありました。

「講師・受講者を交えた全体討議」

最後は、全受講生とアカデミー建築教員と県産材流通課で全体討論会。
自己紹介をしてもらいながら、今回の講座の感想と、日頃の疑問や相談事を言ってもらい、講師陣が各自の専門性で答えていくという形でした。
受講生一人一人にとって意味のある時間になったかと思います。

岐阜県木造住宅相談員2024年度認定式

岐阜県木造住宅相談員2024年度認定式。実は、アカデミー卒業生やリピーターの方も。

岐阜県木造住宅アドバイザー2024年度認定式

盛況のうちに今年も終えることができました。

本講座は、来年度も開催します。
募集が始まりましたら、県産材流通課のWEBページもしくはアカデミーのHPでお知らせしますので、まだの方、リピート希望の方も、応募をお待ちしております。

 

木造建築教員:松井匠