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2025年01月17日(金)

コンクリートも地産地消!ライン生コン工場見学

森林文化アカデミーは「木造建築専攻」と銘打っていますが、木造建築でもコンクリートは必ずと言っていいほどつかいます。
躯体の下にある「基礎」は鉄筋コンクリート(RC)ですからね。
自力建設でもプロの基礎屋さんにお願いしてRCを打設していますし、図面も基礎伏図を描き、強度も学びます。

今年度は岐阜県加茂郡川辺町にある「ライン生コン株式会社」さんの工場を見学させてもらえることになりました。
建築実務者、というか基礎屋さんでも、コンクリートの工場見学の機会はあまりないと思います。
かくいうわたしも初めてでワクワクです。

まず会社の沿革から理念、特徴などの話をスライドでお聞きしました。
1965年からコンクリート事業をされているので60年近くになる歴史ある企業です。

コンクリートというのは「水」「セメント」「砂」「砂利」という4種類を混ぜて作りのが基本です。
混ぜてから90分以内(気温25度以上のとき)に現場に到着して打設しなくては固まってしまうので、まさにナマモノ。
そのナマモノをどう作ってどう運んでいくのか、ツアーをしてもらいました。

ここは骨材(砂と砂利)を積んである場所です。
「砕砂」は坂祝町の山の岩石を砕いたもの、「川砂」も県内の川の砂で、砂利もセメントも県内製造だそう。
素材が近くで取れる自然物ということは……コンクリートも地産地消ですね。

ドラックで運ばれてきた骨材は、下に落ちて、ベルトコンベアーで輸送されていきます。
そのベルトコンベアーの道に入らせてもらい、骨材になったような気持ちで進みます。なんという貴重な体験!

地下はわりと広くベルトコンベアーで骨材がどんどん運ばれていきます

骨材と一緒に登っていく貴重な体験!こんなところに人が歩ける道があるとは!

写真手前の傾斜路を登って、奥のタンクの上から川辺町を見渡す学生たち。タンクには200トンのセメントが入っています

坂祝町の砕砂が運ばれて、ここでもう一度貯められ、ここから設定した分量通り、攪拌機に落とします

攪拌は、1.9㎥を30秒でできるとのこと。いわゆるネコと呼ばれる一輪車で手練りすると0.035㎥くらいしか練れないので、これはすごい

工場の「脳」にあたるすべての制御オペレーター。分量決めから撹拌、ミキサー車への納入まで、ここで制御します。目を離せない重要な仕事です

 

ツアーの後は「スランプ試験」というコンクリートの固さをチェックする試験を、全員やらせていただきました。

ほかにも「塩化物含有量試験」「圧縮試験」を見せてもらい、建築で使うコンクリートの基本的な試験は網羅しました。
スランプ試験は、コーンを引き抜くスピードによって崩れてしまったり、コツがいるようで結果に個人差が出ましたが、慣れると一定になってくるのかも。
これは実務者でも、とても勉強になります。

3回に分けて入れ、25回ずつ突いて混ぜます

一定の速度を保ったまま3秒でコーンを引き抜き、30センチからどのくらい下がった計ります。18センチ±2.5センチ(15.5-20.5センチ)が合格ラインです

コンクリートに入った空気量を調べる試験。これも空気が4.5%の±1.5%(3-6%)の間にないといけません

水とセメントは乾燥ではなく「水和反応」で凝固するため、安定した温度(20±3°C)の水中で養生することを「標準養生」と言います

28日以上経過した時点で圧縮試験を行い、3ピースの平均強度が「調合管理強度Fm(=品質基準強度Fq+構造体強度補正値S)」より大きいと合格

試験一度に3ピース使うので、現場に運ぶ前に、練った時点で、このようにとっておきます

わずかなひび割れですが、これが「破壊」状態。この時点で強度は出なくなっています

「塩化物含有量試験」は、この「カンタブ」という試験紙を挿すだけでわかります

ナマモノのコンクリートをミキサー車に納入。これを一日50台ほど、忙しい時は100台納入するそうです

 

「コンクリートも地産地消」という意外なことに気付かされた見学でした。
コンクリート内に炭素を固定する技術が開発された話もあり、鉄筋の製造時CO2さえ減らすことができれば、環境建築としてRCが注目される日も近いのかも?

ちなみにライン生コンでは、ミキサー車を洗った水はセメントが混じっているので廃棄せず、徹底してコンクリートとして再利用しており、工場から出るセメントのついた水は一切下水に流していないとのこと。大切なことです。

ライン生コンさんのおかげで、とても勉強になりました。本当にありがとうございました。
こうして実習すると、忘れない学びになりますね。

若き工場長みずからツアーガイドをしてくださいました。ありがとうございます

 

木造建築教員:松井匠