アカデミー本校舎の構造設計者 稲山正弘先生をお呼びしました
木質構造の第一人者で、本校の構造設計を担当された稲山正弘先生をお迎えしての「先端建築学」の授業です。
9時から16時半までみっちり稲山先生を独り占め。なんという贅沢な授業!
稲山先生は、愛知県の伝統的な日本家屋で生まれ育ち、東京大学を卒業。ミサワホームを経て、もう一度東大で博士課程を修了し、「木材のめりこみ理論とその応用」で博士(工学)を取得され、その後も、木と木が組まれて建つ日本の木造建築の叡智ともいえる架構の性能を、数々の実験と設計で実証し続けています。構造設計者の聖書となる「木造軸組工法住宅の許容応力度設計」という本の編纂にも深く携わっており、木構造の世界では神様のような存在です。
2002年には稲山先生が北川原温事務所とタッグを組んで設計した森林文化アカデミーの本校舎が「日本建築学会賞」と、優れた構造デザインに贈られる「松井源吾賞」を受賞しています。
午前中は、稲山先生の成された仕事を時系列に追っていくスライド講義からスタート。木構造の可能性を押し広げていく挑戦に目が離せず、あっという間に3時間が経ってしまいました。
午後は、アカデミー構内をじっくり探索。本校舎の構造設計をしたご本人に解説してもらえるという贅沢な時間です。わたしも外部からの視察者に本校舎の建築案内を行っていますが、稲山先生のツアーで、これまで聞いたことのない建築秘話をたくさん知ることができました。壁の面外風圧を受けている梁や、実は壁を吊っている箇所があるなど、毎日見ている建物でも、まだまだ知らないことがあるものです。
稲山先生が開発し実験して採用したアカデミーの重要なデザインコードである「面格子」は、主に川沿いの湿気のある箇所で生物劣化が進んでおり、24年の歳月でどのような変化があるのか、興味深く観察されていました。
トラス構造の木橋も、下から解説。
テクニカルセンターABは、山と里山が交わる場所として、平面上も立面上もギザギザの構成になっているという設計コンセプトも解説してもらいました。この建物の裏手は建設当初ジメジメしていたので腐朽を心配していたそうですが、浸透トレンチの設置により特に劣化しておらずホッと一息。
途中、学生のつくった自力建設も解説していきました。2年生は階段を、1年生は上棟したばかりの小規模乾燥庫を紹介し、そのクオリティに稲山先生も感心しきりです。
戻って、さらにスライド講義へ。
あくなき探究心で、木造建築を「より強く、より美しく、より自由に」する稲山先生の姿から、多くを学ぶことができました。
稲山先生ありがとうございました。「今度は蛍の季節に来たいな」とおっしゃっていましたので、ぜひまたお呼びしたいと思います。
木造建築教員 松井匠