屋根工事 【前編-下地材取付-】(自力建設2024「栞」)
建て方の後半は屋根工事です。
施工の話の前に、少し今回の屋根の設計の話をしましょう。
屋根の役割は「雨風や雪を凌ぐこと」に加えて、もう一つ大きな役割として「地震や暴風で建物が倒れないようにすること」があります。例えば、箱を手で持った時をイメージしてください。蓋が開いた状態と蓋が閉めた状態で、横から力を加えて持ち上げたとき、箱が変形しやすいのはどちらでしょうか。きっと蓋が開いた状態だと思います。屋根にはこの箱の蓋と同じ役割があります。これを「屋根構面(水平構面)」というのですが、箱と同じように建物も柱や梁の上に屋根を付けると建物を変形しにくくすることができます。今回の設計では構造解析ソフトで、地震や暴風時にかかる力をシミュレーションして建物の変形量を計算しながら、屋根の強さを検討しました。
さて、実際の施工の話ですが、透湿防水シートを敷設します。こちらはウルトジャパン社様から今回ご提供いただいた「サーモファサード25K」を使用しています。このシートで室内の湿気を排気する屋根下の通気層を作ります。大きなシートをヨレなく貼り合わせるという初めての作業でなかなか苦労しました。
続いて下地材を取り付けます。今回の下地材は意匠性を重視したACパネル(学内で自作したヒノキの幅剥ぎ板)と普及性を重視した構造用合板の2種類を使い分けています。さらに、先ほどの屋根構面をなるべく強くするために千鳥配置にしました。しかし、この配置にすると一枚ごとの板の幅の寸法と直角を高い精度で出す必要があり、わずかな誤差で板同士を合わせる箇所で隙間が出来てしまいます。今回はとりわけ自作のACパネルの幅調整に苦労しました。何度か再調整もありましたが、大工さんの技術力もお借りしてなんとか収めることができました。
下地材を張り終えると防水シートを上に貼っていきます。この防水シートは下地材が露出しないように、屋根の低い側から重ねるように貼っていきます。これは万が一、雨水が板金の下に侵入した際に、雨水がさらに防水シートの下へ入り込んで下地材を傷まないようにする工夫です。
この防水シートを張り終える頃には、日も暮れはじめていましたが、これで目標としていた建て方の作業が完了しました。怒涛の3日間でしたが天気にも恵まれ、大工さんや先生方のご指導があって無事に上棟できました。ご協力いただいた多くの方々へ感謝の気持ちでいっぱいです。さて、この後は、屋根の板金工事へと続きます。それではまた!
木造建築専攻 増岡