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2024年07月31日(水)

根曲がり材とオリパラ材の「ねまがりばし」(morinos建築秘話72)

7月17日に、紀子殿下がアカデミーにお成りになりました。

私もmorinosの建物を説明させていただきました。
気さくな人柄で、丸太や土壁に関して、いくつか質問もあり貴重な体験でした。

そのmorinosですが、建物周囲は雨水から縁を切るように「ぐり石」が敷き詰められ凸凹しています。

芝生広場からスムーズにデッキに上がれるように昨年「ねがまりばし」の提案を学生とデザインしていましたが、今回のお成りに合わせて竣工しました。
「根曲がり材」と「オリパラ材」を組み合わせたブリッジです。

もう少しアップで見てみます。

製作はmorinosの伊佐治さん。

なかなか苦労したことをお聞きしました。
元本学の林業教員ですので、ただ製作するだけでなく、教材になるようにいろいろ記録もとられていました。

デザインのコンセプトは、傾斜地の多く見られる根曲がり材の個性をデザインに生かし、曲がり材の曲面を橋の両サイドに見せることで柔らかい印象を出すことです。
また、橋の踏み板はオリンピック・パラリンピックのリユース材です。
普段、使われない素材を有効に魅力的に活用することで、森林資源の可能性を感じてもらおうというもの。

ですが、この根曲がり部分、一筋縄ではいきません。

製作過程を見ると、順調に加工されているように見えます。

ですが、根曲がり材の断面を拡大してみます。

年輪に沿って割れています。

成長過程で垂直に方向を変え、長年の風で常に揺られています。最も力がかかるのが根元の部分。
応力が相当かかっていたのが、半割にした際に開放され割れてしまっていました。

割れの状況をメモしながら、時間がたつごとに進行しています。

 

伊佐治さんには苦労して製作いただき、今回の「ねまがりばし」のお披露目につながりました。

普段使われない素材が、なぜ使われていないのかがわかる一面を見ました。
次回はこのクセも知りつつ、効果的に使うデザインを考えるのも面白そうです。

木造建築教員 辻充孝