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2024年07月10日(水)

自分を知る、仲間を知る〜セルフデザインとファシリテーション

<2024.4.24 – 6.3> 4月、今年も新しい仲間が出会いました。

出身、年齢、経歴など、多種多様な人が集まる森林文化アカデミー・クリエーター科。
森林をテーマに、人生の新しい夢に向かって2年間挑戦する人々は、苦楽を共にする”学び合う仲間”です。

特に社会人をしていた人々には、久しぶりの「学生」という時間。
新生活がスタートしたはじめの時期に、お互いを知り合うと同時に、社会人を一旦立ち止まり、あらためて自分自身を見つめ直す機会を持ってほしいと願い、この科目を昨年からスタートさせました。

「セルフデザインとファシリテーション」、全4回の実習です。

 


第1回目(4/24)チームづくりとファシリテーションの基礎

科目名は「セルフデザイン」そして「ファシリテーション」ですが、授業のほとんどは「セルフデザイン」の時間です。

一方、「セルフデザイン」を深めるためには、どうしても他者の協力が必要です。そのためこの科目では「セルフデザイン」のためのコミュニケーションや場づくり、相手の思考の引き出し方などを通して、「ファシリテーション」の考え方、アプローチをそれぞれ考えてもらいます。

第1回目は、アイスブレイクから科目全体のオリエンテーション、そしてストーリーテリングによる「聴く」練習を行いました。

 


 

第2回目(5/1)マイプロシートと対話のファシリテーション

第2回目は、ファシリテーションの概要と、その中からコミュニケーション促進のためのファシリテーションとその考え方について、自身の経験に基づいて伝えました。

ファシリテーションを「実践している」〜「はじめて聞いた」まで自己申告でラインアップ

その後、実際に意見を出し合うミニワークショップを実践。よく見る光景ですが、この中にファシリテーターを意識して参加する学生を置いています。

終了後、「ファシリテーションとは?」「ファシリテーターとは?」について、ディスカッションしてもらいました。

次に、ファシリテーション・グラフィックの練習。そして事前に作成した「マイプロシート」に基づく3人一組のストーリーテリングを行いました。話し手の人生が語られる中、聞き手は相手の話に集中。記録係はグラフィックを使った話し手の人生史づくりに挑戦です。

 

グラフィックを用いた記録にそれぞれ苦労していましたが、出来た絵を見ながらの振り返りは新鮮で、自分の人生史を笑顔で聞き入る話し手の姿が多く見られました。

 


 

第3回目(5/2)「Beの肩書き」をつくる

事前に「偏愛マップ」を作成してきてもらい、「Beの肩書き」をつくるワークショップです。

元「greenz.jp 」編集長、兼松佳宏さんの「BEの肩書きワークショップのひらき方<I am(○○なわたし)編>」を参考に実施しました。「本当の自分はなにか?」「なりたい自分はなにか?」を、他者と一緒に考えられる素敵なワークショップです。

それぞれの「偏愛マップ」がしっかり書き込まれてい、これだけでずっと話を聞きたくなります。

「偏愛マップ」、そして前回の「マイプロシート」を使いながら、これまでの「Doの肩書き」から、その奥にある自分自身を表現する「Beの肩書き」を仲間と一緒に探索していきます。

最後に、新しい自分を表現する「Beの肩書き」を仲間から受け取ります。「Beの肩書き」とその意味・・・本当の自分を紹介する表情は嬉しそうでした。

自分自身を知るためには、信頼できる「仲間」の存在、そしてその仲間との対話がとても重要だということを感じてもらえたのではと思います。

 


 

第4回目(6/3)SDGs de 地方創生カードゲーム

いよいよこの科目の最終回は、昨年に引き続き「SDGs de 地方創生カードゲーム」を実施。
ファシリテーションを用いた体験プログラムですが、昨年はコロナ禍で、残念ながら少人数での実施でした。
今年は14名が参加。やはり人数が多いと盛り上がります。

人口減少に悩む地方でのまちづくりをテーマにしたこのゲーム。プレーヤーはそれぞれ、自分自身の目標と、まちの持続化の両方に取り組むのが特徴です。

プレーヤーは民間事業者、まちづくり団体、個人、行政など様々。今年の新入生には元・公務員や元・行政職員もいて、ゲームを通して違う立場からの視点も体験してもらえます。

ゲームが始まり、前半は停滞気味。まちの人口が増えず、プロジェクトがなかなか進みません。
しかし後半は、経済や暮らしが伸び、最終的には人口増となりました。

 

途中で何が起きたか、皆でふりかえります。出てきたキーワードは・・・

・はじめは自身の目標に固執していたが、その意識を変えたら回り始めた。

・人材の取り合いが起きていた。紹介し合う、譲り合ったら変わった。

・自分が持っているものを出し合ったときに、まちが回り始めた。

などなど。中でも、「プロジェクトやまちづくりは、一人だけではできない」という言葉に、この日起きたことが表されていると思います。

そして「当事者意識をもった人がいるまちは、心地よい」という感想。短い時間でしたが、様々な人がつながる「まち」を体験したが日でした。

 


 

こうして全4回の授業を終えて、みなさんの感想は:

・自分と向き合う・知るということができてよかった。

・マイプロシートを書くことをで,改めて自分らしさや自分のわかっていないところなどが見えてきて面白かった。

・自分の軸を持つことで。将来の方向性が見えてくると思った。

 

・・・と、「セルフデザイン」に興味を持ってもらえたようでした。
また、「仲間との対話」については:

 

・人の話を真剣に傾聴したり、自分の感じていることや考えてることを時間をかけて言葉をにしていくという経験はあまりなかったので新鮮

・自分の性格や才能を把握するには他者が必要

 

「セルフデザイン」に「対話の力」が必要なことが伝わったようで、嬉しいです。
その他、次のようなコメントも。

・「セルフデザイン」と「ファシリテーション」は似ているというか、相互関係があるように感じてきた。

・”自分の意見は必要ない”という仕事を長くしてきたが、「セルフデザイン」と「ファシリテーション」は、そのような世界と対極にあると思った。多様な考え方を認めることができないような世界を、子供たちには経験してほしくないと願っているので、今回の授業のようなことは大切だ。

・クリエーター科のような、将来の起業などを想定した学科では、自己理解とその表現、デザインといったことが重要になると思う。

 

***

 

教員側として授業のねらいはもちろんあるのですが、<教える→学ぶ>という一方的なものではない”共育”型の授業(実習)では、「共に学び合う仲間」から常に新しい気付きをもらえます。

なかには
「対話はあらゆる場面で必要。卒業するまでに、自分なりの”話の場づくり”ができるようになりたい」
という嬉しいコメントも。

アカデミー生は卒業後、大なり小なり、人口の少ない中山間地域に関わる人が多いはず。「ファシリテーション」に興味をもったみなさん、多様な人が交じる「創造的で楽しい対話の場づくり」を一緒に研究していきましょう!

そして、2年間の素敵な仲間とのアカデミー生活、存分に楽しんでください。

森林環境教育専攻 小林謙一(こばけん)