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2024年05月23日(木)

豊川閣妙厳寺法堂・位牌堂視察(その2)

さて、建物の細部にもこだわりがたくさん!

【彫刻のこだわり】
もともとの彫刻物も生かしつつ、各務原の木彫家の方に新たな彫刻も施してもらっているそうです。大き目の材を調達していたため、木彫家さん側から「浮き出た立体感のある彫刻をしたい」との提案があってできたのがこちら。

視察の様子

視察の様子

職人の方々のこだわりや想いが詰め込まれているんですね。

視察の様子

この麒麟は日本橋の彫像を原案に彫ったそうですが、顔がお堂の中央向きに傾いているというかわいらしいこだわりが!

 

【横架材のこだわり】
社寺建築と言えば反りかえった屋根『軒反り』が特徴的です。

視察の様子

このそりに合わせて桁は見た目にはわからないぐらいほんの少しだけV字状にしているそうです。
ストレートにしていると軒が反っっている分横架材が幅広に見えてしまうようで、それを防ぐためとのこと。

視察の様子

また、位牌堂の天井はほんの少しだけむくらせて(ふくらませて)いるようで、これは水平にしていると逆に垂れ下がって見えてしまうことがあり、それを防ぐためだそうです。
見た目にはわかりにくい細かなこだわりが美しい木造建築を構成しているんですね♪

 

【格(ごう)天井のこだわり】
社寺建築の天井にはこのような格子状の天井「格天井」が施されていることが多いですね。

視察の様子

この木目の向きにもこだわりの法則性があるそうです。
東西方向と南北方向で互い違いに配置することは勿論、東西面では東が根元、南北面では南が根元としており、常に木目の方向性を統一させているそうです。
施工時に木目で迷わない為でもある一方で、木目の流れの統一感や木の生えているイメージを持たせる狙いがあるそうです。

 

【空調設備のこだわり】
これだけ大規模な木造建築物の空調管理はとても難しく、床下空調を使用し人が活動する範囲高さ約2m程度までの範囲で空調を効かせる設計になっているそうです。風が直接漆喰壁に当たらないように吹き出し口はすこし傾けるというこだわりが!

視察の様子

これだけの建築物なのでこだわりポイントを上げ始めるときりがありませんね。
さて、こだわりとは別にもう一つ驚いたことが。
こちらの位牌堂の位牌が並ぶ雛壇、長手方向片側を作るのには1週間ほどかかったそうです。では、反対側を作るのにはどれだけかかったと思いますか?

視察の様子

なんと2日程度で出来上がったそうです。プロの大工さんともなると一度作ったものであればそれほど作業時間を短縮させることができるんですね!
私たちも自力建設で大工さん方の技術に感動し、そしてたくさんすくわれてきましたが、改めて職人の皆様のすばらしさを感じる瞬間でした。
これほど素晴らしい建物も檀家さんの目にしか映らないのかと思うとなんだかもったいないような気がしてしまいますね。

もともと私自身社寺建築を見るのは大好きでしたが、こうして建築を学び始めてから見える景色はまた違っていて。そして森林の川上から川下までを学べるアカデミーで過ごしているからこそ、使用されている木材のすばらしさの感じ方も入学以前とはまた違っていて。改めてアカデミーで学べてよかったと感じました。

結びになりますが、改めて竣工前で忙しい合間を縫ってご案内くださった中島工務店の皆様、本当にありがとうございました。

木造建築専攻2年  三輪