【アニュアルレポート2023】日独木造建築シンポジウムと海外交流
2023年5月に学生らとともに日独木造建築シンポジウムに参加しました。その概要をアニュアルレポートに報告しています。
この他、過去のアニュアルレポートに以下の報告をしていますので、御興味のある方は是非ご一読いただけましたら幸いです。
過去のアニュアルレポートは、ダウンロードページからご覧いただけます。
2022年 岐阜県産横架材デジタルスパン表の展開
2021年 韓国への岐阜県産材の展開のための構造技術支援に関する研究(その3)
2020年 韓国への岐阜県産材の展開のための構造技術支援に関する研究(その2)
2019年 韓国への岐阜県産材の展開のための構造技術支援に関する研究(その1)
2018年 岐阜県産ヒノキ材による木造ラーメンの開発に関する研究
2017年 熊本地震による木造建築の被災状況と今後の設計手法に関する研究
【アニュアルレポート2023】日独木造建築シンポジウムと海外交流
目的:平成26(2014)年、森林文化アカデミーはドイツ・バーデンビュルテンベルク(BW)州のロッテンブルク林業大学(HFR)との間で教育連携の協定を締結した。日独の木造建築教育に係る連携については、当初は建築教員間の交流が主であったが、徐々に学生も交えた交流として、木造建築デザインWS(2017年~2018年)、木造建築協同設計WS(2019年)、HFR木造建築学生来日研修(2019年)、木造建築デザインWS(2021年~2022年、Web開催)などが活発化してきた。教育交流の集大成の一つとして節目ごとに開催してきた日独木造建築シンポジウム(2016年・日本, 2017年・日本, 2023年・ドイツ)がある。本報告では、ロッテンブルク林業大学と実施した「日独木造建築シンポジウム」とその際のドイツ視察について報告する。
概要:第1回日独木造建築シンポジウム(2016年)は森林文化アカデミーで開催した。ルドガー・デデリッヒ氏(HFR・教授) による「ドイツにおける木造建築のこれから」、長井宏憲氏(隈研吾建築都市設計事務所)よる「木でつなぐ建築」を講演した。その後、アカデミー教員を加え、パネルディスカッション「木造建築の未来」を行った。
第2回日独木造建築シンポジウム(2017年)は森林文化アカデミーで開催した。ルドガー・デデリッヒ氏(HFR・教授)による「ドイツにおける木質材料とエネルギー、温熱環境の特徴・強み・課題」、山崎真理子氏(名古屋大学農学部・准教授)による「日本における建築木質材料の特徴・強み・課題」、小泉雅生氏(首都大学東京大学院・教授)による「日本におけるエネルギー・温熱環境の特徴・強み・課題」を講演した。その後、岐阜県森林技術開発・普及コンソーシアム会員、アカデミー教員を加え、パネルディスカッション「地域の木造建築の持ち味を活かすには」を行った。
木造建築デザインWS(2017年~2018年)は森林文化アカデミーにて、現在のmorinosの基本設計を行った。ルドガー・デデリッヒ氏(HFR・教授) および隈研吾氏(隈研吾建築都市設計事務所)をお迎えし、基本設計講評会を行った。木造建築協同設計WS(2019年)はアカデミー学生とともに訪独し、森林管理局のオフィス設計(2000㎡)を行った。
コロナ禍であったため木造建築デザインWS(2021年~2022年)は、Web開催にて、日本は「屋外通路」、ドイツは「チャペル」をそれぞれテーマとし基本設計を行った。
以上の連携活動を含め、これらの集大成の一つとして、第3回日独木造建築シンポジウム(2023年)をドイツにて行った。テーマを「第二のモダンな木造建築を目指して。日本とドイツの木造建築文化の発展と可能性」とし、会場はNature Theater Reutlingen(野外劇場 ロイトリンゲン、写真1)で開催した。司会はルドガー・デデリッヒ氏(HFR・教授)である。
まず、ピーター・フォーク氏(BW州 農村栄養・消費者保護省 大臣)、前川信孝氏(在ミュンヘン日本国総領事館・日本総領事)、涌井史郎氏(岐阜県立森林文化アカデミー 学長)、トーマス・ケック氏(ロイトリンゲン市長)より挨拶をいただいた。続いて、隈研吾氏(隈研吾建築都市設計事務所)による「伝統と将来の間にある日本の木造建築」、ペーター・シェレット氏(教授・シュトットガルト)による「伝統と現代の間にあるドイツの木造建築」、辻充孝氏(森林文化アカデミー 教授)による「モリノス-地域固有の建築文化をつくる」 、シュテファン・ビルク氏(教授、シュトゥットガルト/ミュンヘン)による「建築と木造建築ー建築様式転換期に寄せて 」、小原による「構造要素の技術開発から生じる木造建築の構造デザイン」、トルステン・ヘルビッグ氏(教授・シュトゥットガルト)による「木造建築の新境地-広くそして高く」を講演した。(写真2)
この訪独では、アカデミー学生とともにミュンヘン、ローゼンハイム、シュトゥットガルト、ロッテンブルク、テュービンゲン、ハノーファーなどを視察した。フラウンホーファー建築物理研究所(Eri Tanaka 氏)およびバウビオロギー研究所(Winfried Schneider 氏)を訪問し、「建築生物学」や「建築物理学」などに関して実証実験やシミュレーションを通じた木造建築への応用について学生も交えて意見交換(写真3)をした。地下室と1階はRC造、2、3階はハイブリッド木造、4階~6階の居住階は木造(CLTパネル工法)である建設中のヘッヒンガー・エック・ノルド(写真4)を視察した。
ハノーファーではLIGNA(林業・木工機械展)の視察(写真5,6)を行った。LIGNAは約50ヶ国(ドイツ、イタリア、オーストリア、トルコ、スペイン、中国など)から約1,300社の出展がある。約160ヶ国から約80,000人の来場者がある。
最先端の情報や施設に触れることや現地の方から直接お話を伺うこともできる海外交流を通じて、得られたものを取捨選択しながら日本の木造建築に応用していくことができる人材育成をアカデミーは担っていきたい。
教授 小原 勝彦