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2024年01月10日(水)

100年先を見て森を考える(山村資源利用演習)

<2023.11.6-7>エンジニア科2年・林産業コースの選択科目「山村資源利用演習」第3回目を行いました。
この科目の最終回は、高山市・飛騨市へ1泊2日の研修です。

1日目はまず、高山市のオークヴィレッジさんを見学させていただきました。
ご案内いただいたのは、小木曽賢一(こぎそ・けんいち)さんです。ものづくりのプロを育てる「森林たくみ塾」の代表を務められています。

秋空の森で気持ちいい空気の中、講義スタート。
小木曽さんからまず、オークヴィレッジ創設のエピソードを伺いました。


創立50周年を迎えたオークヴィレッジですが、創設された1970年代の日本は、高度成長の真っ只中でした。

オークヴィレッジを創設した稲本正 氏は当時、大学で原子力を研究してました。
急速な経済成長の中で、大量生産・大量廃棄の時代となり、稲本氏は「それでいいのか?」と疑問を持ったそうです。

ものづくりの素材が木からプラスチックに変化していく中、稲本氏は木の資源、木の文化に注目。
教職員や学生と一緒に、山小屋をつくるプロジェクトを立ち上げます。

オークビレッジのホームページによると、このプロジェクトは1972年にはじまり、山小屋は2年がかりで完成したそうです。自分たちで家をつくる、という経験を通して、参加したメンバー林業や建築、大工、木工の技術を身に着けていきました。

木を中心とした、循環型社会の再構築を目指す」
ーー思いを共にする者が集まり、高山市へ。1974年に高山市で「オークビレッジ」が立ち上がりました。

「他の木工メーカーとは、会社の立ち上がりが違う。オークヴィレッジは環境会社なんです」
という小木曽さんの言葉に、私たちはハッとさせられました。

深い理念をもつオークヴィレッジには様々な人がつながっていきます。
敷地内には、俳優の菅原文太さんが購入した土地もありました。
約50年前から文太さんはここで木を伐り、炭を焼き、森の手入れをずっとされていたそうです。

「文太さんが育ててくれた森」と小木曽さんに案内していただいた森は、ミズナラなどの広葉樹の森です。
秋で葉が落ち始め、森には光が入り、風が吹くと高揚した葉がキラキラと舞い降ります。

「日本の広葉樹で、日本の森で”ものづくり”をするのです。日本の広葉樹は、小径木のものになる。これをどう使うか。欠点だらけの木を使えるのが”職人”なんです」

オークヴィレッジの森では、木工に使う木を育てながら、交流イベントも行われています。
森にはマイクも設置され、森の音が「Forest Notes」でライブ配信されています。

「森づくりに共感する人が、お客さんになっている」

森づくりを学び、それを「つかう」「伝える」ことを手掛けていく林産業コース学生のみなさん。
オークヴィレッジの視点と、幅広い活動からは、とても多くの学びがありました。

これから仕事を通して森に関わる仲間になる学生のみなさんへ、小木曽さんからのメッセージです。

環境問題について、『いまだけ、ここだけ、自分だけ』で済んでしまう。
私たちは広い視野を持ち、先を考えて行動しないといけないと思います。
森は100年先を見て考える――
長期スパンで考え、行動することが大事になっていきます」

学生のみなさんの感想からも、ものづくりや経済だけではなく、環境意識やつながりが大事だという言葉が出ていました。

ものづくりと暮らしを通して森を考える広く、そして長い視点を学ばせていただきました。
小木曽さん、本当にありがとうございました!

高山市を出発して、次は飛騨市です。(続く)

森林環境教育専攻 小林謙一(こばけん)