きのこの同定実習と「秋のきのこ展」開催の報告
本年も森林文化アカデミーの学園祭(翔楓祭)の一企画として「秋のきのこ展」を開催し、秋季に美濃地方で見られる野生きのこを中心に展示を行いました。それに先立ち、アカデミーの学生実習できのこの採取と同定実習も行いましたので、あわせて報告します。
今年は11月になっても夏日があるなど例年にない暑さが続き、きのこの発生にも大きく影響したようです。実習で関わっているマイタケ原木栽培の現場でも例年より発生がかなり遅れていたようでした。そんな異常とも言える気象条件のなか、今秋もきのこの同定実習を行いました。エンジニア科の実習(11/1)ではアカデミー構内に発生するきのこを、クリエーター科の林業専攻、森林環境教育専攻の実習(11/7)ではアカデミー構内に発生するきのこと郡上市の中間温帯の森林に発生するきのこを採取しました。
エンジニア科での実習では、アカデミー構内のコナラの株元に大きなオオワライタケが発生しており、皆その大きさに驚いていました。他にもカラカサタケなどの大きなきのこも採取でき、短時間の実習にしては様々なきのこに触れることができました。
クリエーター科の実習で訪れた郡上市の山林では、モミの樹下でアカモミタケの発生を確認することができました。このきのこはモミ属樹種と菌根共生をしている菌根菌で、それらの樹木が生えていないところでは見ることができません。あまり知られていませんが、美味な食用きのこで、塩胡椒を軽く振ってバターソテーにすると絶品で、知っておくとちょっと得をするかもしれません。秋にモミの木を見かけたらその周辺を探してみることをおすすめします。
またこの日はマイタケや、さらにそれより発生時期が早いとされるシロマイタケも見ることができました。マイタケは通常では9月末から10月初頭にかけて発生のピークがあり、この時期には既に見られなくなっているはずですので、かなり発生が遅れていたようです。一方、晩秋に多いクリタケやオソムキタケ、ナメコなども同時に見られ、全体として種類数は多くはありませんですが、秋季に見られるきのこを幅広く見ることができました。
昨今は野生きのこを食材にするジビエ料理店が話題になったり、野生きのこの観察会や採取体験のワークショップもあったりします。実習で見ることができた種数は多くはありませんが、これをきっかけとして折に触れて野生のきのこを観察し調べる習慣をつけると学びが深まり、今後に活かしていくことができるでしょう。
このような実習で採取したきのこも含めて、11/12-13に開催された翔楓祭の「秋のきのこ展」で展示しました。今回の展示会で展示できたきのこは45種で、昨年の42種とほぼ同様です。残念ながらきのこの種数は多くはありませんでしたが、展示会には140名を超える方々にご来場いただきました。また展示したきのこの採取にあたっては、森林文化アカデミーのエンジニア科、クリエーター科在校生や卒業生の方々に協力してもらいました。また採取地、実習地の場所を提供していただきました方々にも、この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。(教員 津田)
(以下、展示したきのこです。五十音順)
アイカワタケ、アイカワタケ(ヒラフスベ型)、アカモミタケ、アズマタケ、ウチワタケ、オオワライタケ類の一種、オソムキタケ、カワムラフウセンタケ、カワラタケ、カラカサタケ、キアシグロタケ近縁種、クジラタケ、クチベニタケ、クリタケ、コフキサルノコシカケ、シイタケ、シロカイメンタケ、シロマイタケ、シワタケ、スギエダタケ、スギヒラタケ、チャウロコタケ、チャツムタケ、チャナメツムタケ、ツガサルノコシカケ、ツチグリ、ツヤウチワタケ、ツリガネタケ、ナメコ、ナラタケ、ニガクリタケ、ニクウチワタケ、ヌメリイグチ、ハイイロシメジ、ハナウロコタケ、ハナビラニカワタケ、ヒイロタケ、ヒトクチタケ、ヒラタケ、ベニタケ属の一種、ホウロクタケ、ホコリタケ、マイタケ、ミイロアミタケ、モエギタケ、ロクショウグサレキン