森本 好彦(もりもと よしひこ)
マイタケ生産で地域を元気に
里山を利用した生業から地域を元気にする
プロフィール
1962年生まれ。岐阜県出身。会社を退職後、在所である揖斐川町に戻り森林文化アカデミー入学。山村づくり講座で学ぶ。諸事情により退学し、家業の農業を継ぎ、菌床栽培中心のマイタケ生産業界では珍しい原木栽培に取り組む。
質問1)今のお仕事の内容を教えてください
伝教大師最澄が創建したと伝えられる揖斐川町の横蔵寺がある集落で、米作りとマイタケを栽培しています。米は栽培が難しくなった近所の方から依頼された分も含め、2町歩(およそ2ヘクタール)の水田で栽培し、原木を使ったマイタケ栽培は、直径15cm、長さ15cmほどの原木を、年間2000本ほど使用しています。
質問2)原木マイタケ栽培を始めた経緯を教えてください
定年前に実家に戻ろうと考えたときに、在所の周りが山だらけなので、山を使って何かをしたいと考えました。そのために木について知りたい、という思いから森林文化アカデミーに入学しました。
在所の集落は、横蔵寺、飛鳥川のホタル・桜並木の観光資源はありますが、地域活性化のために何か特産品が必要なのではないかと考えました。そこで頭に浮かんだのが、森林文化アカデミーで学んだマイタケの原木栽培でした。菌床栽培と違って原木栽培では天然マイタケに近いマイタケを生産することができます。また、原木栽培では、マイタケ菌の接種前に原木を煮沸して殺菌する必要があります。そのための燃料として薪が周囲の山から手に入ることも重要でした。
質問3)米づくりとマイタケ生産の年間スケジュールを教えてください
大雑把に言って、3月〜9月が米作り、10月〜2月がマイタケ栽培の期間です。マイタケ生産では、11月に原木を伐採して、12, 1月で玉切り、2月に植菌してからしばらく寝かせて菌が回るのを待ち、6月末に畑(露地)に埋めます。そして10月に収穫するというサイクルです。お米は3月から始めて9月に稲刈りですから、ちょうどマイタケ生産の忙しい時期とお米作りの繁忙期が重ならず、年間のスケジュールが回っています。
質問4)アカデミーでの印象深い思い出はありますか?
エンジニア科の高卒すぐの若い学生が授業でうるさくするので叱ったことがあります。様々な年齢の学生が同時に同じ場所で学んでいるアカデミーならではの光景ですね。我々は若者から元気をもらいますし、若い学生は年上の学生の経験から多くを学びます。他の学校には見られない、よい関係ではないでしょうか。
質問5)学生に向けてメッセージをお願いします
学歴などは考えず、ただ学ぶのに適していたので入学した学校が森林文化アカデミーでした。その中でマイタケに出会ったことが、今の生業につながっています。アカデミーには色々な学びの材料がありますが、興味を持ったものを突き詰めることで次につながります。キャリアを持って入学してきた人も、学び直しは柔軟に。地域に移住するときは、上っ面だけでなく、中身をちゃんと考えることが必要です。人と会って現地に足を運ぶ。当たり前かもしれませんが、これに尽きると思います。
教員からのコメント
里山の資源利用を考えるときに大事なことは資源が持続可能な形で利用されているかどうかです。そういった意味で、生業で使う資源を地元で調達するスタイルは、理にかなっていると思います。地域の人の生業でその地域が活性化することが、地域の自然、そして資源の持続可能性を担保しているからです。原木の調達は県外から、というケースも多いので、このような取り組みが、県内随所に拡がっていってほしいですね。(柳沢)
(2023.11.17掲載)