秋の木工事例調査 ③奥飛騨開発株式会社
秋の木工事例調査、3カ所目は高山市国府町の奥飛騨開発(株)にお邪魔しました。 お話を伺ったのは、木材部の堀口清憲さんです。
奥飛騨開発は、鉄道の枕木に使うクリなどの広葉樹の取り扱いから始まった会社とのこと。
広葉樹の伐採・搬出から行っていますが、今回お邪魔させていただいたのは、宮川沿いにある「中間土場」と呼ばれる場所です。
扱っている樹種は幅広く、ナラやブナを中心に、ヤマザクラ、カエデ、キハダ、トチ、クルミ、ミズメなど20を超える樹種を扱っているとのことで、訪問した日も敷地には様々な樹種の丸太が所狭しと積み上げられていました。
現場で伐採した広葉樹を一旦この中間土場に運び、ここで樹種や直径ごとに選別します。そしてユーザーのニーズに合わせて付加価値をつけた商品とすることで、伐採現場から直接出荷するよりも収益の向上が期待できます。
もちろん、大口の取引先である製紙会社などに丸太(原木)のまま出荷するものもありますが、全体の半分以上は、おが粉やチップなど、自社製品として出荷しているとのことです。
近年は、環境意識の高まりやニーズの多様化などから、ユーザーから細かな要望や相談を受けることが多くなってきました。
例えば、樹種を“サクラ”に限定して燻製用のチップを作って欲しいとか、きのこの栽培業者からは、椎茸用にはナラ材、なめこ用にはブナ材のおが粉が欲しいなどの細かい要望があるそうです。
これまでは、需要がないと考えていた小径木でもきちんと選別することで、価値を高めることができているとのことです。
堀口さんは、重機の先端につけたグラップルをまるで自分の手指のように扱い、瞬く間に丸太を樹種毎に選別していきます。
アカデミーでは「樹木同定」という授業がありますが、それは主に「葉」の付き方や形状などで見分ける方法を覚えるというものです。中間土場に積み上げられた丸太にはもちろん「葉」は付いていませんが、堀口さんは、次々に選別していきます。
「ユーザーの要望の多様化が起きたので選別する技を覚えた」とのことですが、堀口さんでも樹皮だけで見分けることは難しいそうです。
一見すると同じように見える樹種の見分け方のコツを、こっそり教えてくれました。それは、樹皮の裏側(専門用語では「形成層」)をよく観察すること。樹皮の裏側と木部との間の部分の特徴を覚えれば、100%見分けられるとのことでした。
例えば、「クリ」と「ナラ」は樹皮の表面を見てもほとんど見分けはつきませんが、皮を剥いで裏側を見てみると、クリの皮の裏はツルツルですが、ナラはもじゃもじゃとしているとのこと。
もう一つ、「ホオノキ」と「ブナ」は、ブナは皮の裏側がオレンジ色でざらざらしているのに対して、ホオノキは茶色で、そこで確実に見分けることができるとのことでした。
広葉樹を扱う難しさをお伺いしたところ、
「自然物が相手で同じものは一つもないから大変だし、受注生産で波もある。ただ、波があるので工夫のしがいもあって、それが逆に楽しい。決まっていないことが多いのが木材。それが魅力だ」と、楽しそうに話す姿がとても印象的でした。
堀口さんはじめとした広葉樹に関わる皆さんの努力があって初めて、私たちが広葉樹で木工作品を作ることができるのだと、改めて感じた1日でした。
文責 木工専攻2年 堀田陽介 / 1年 矢持達也・鈴木達也