秋の木工事例調査 ①金山チップセンター
今年の秋の木工事例調査は、木材に焦点を当てて事業所を見学しました。
1件目は下呂市にある「株式会社金山チップセンター」を訪問しました。こちらの主な事業は、大手製紙会社向けの木材チップ製造ですが、他の用途のチップ製造や広葉樹の製材販売、家具の製造販売など幅広く事業をされています。こちらの製紙以外の用途の木材チップとしては、バイオマス発電の燃料用チップ、公園やドッグランなどに敷設するチップ、酒造や燻製、きのこの菌床用といった食品製造向けのチップがあります。
社長の河尻和憲さんにご案内いただきました。
実際にチップの製造ラインの一部を見学させていただきました。まず原料となる丸太の皮剥きをしたのち、21枚もの刃物が付いた裁断機で丸太を刻みます。次にスクリーンでふるいをかけて粗さを揃えます。この裁断とふるいの工程を繰り返して、出来上がったチップは、通常2〜4mm程度の大きさになりますが、食品製造向けは1mm程度のより細かいものになります。そして、製造ラインから出てきたチップは、天然乾燥を経て出荷されます。
チップの原料となる木材の大半は、スギ・ヒノキなどの針葉樹で山からの間伐材です。しかし、割合としてはわずかですが広葉樹もあります。これら広葉樹は、針葉樹の伐採や工事などで出てくる障害木として採られ出荷されたものです。こちらでは、集まった広葉樹のうち質の良いものは、製材販売や家具の製造販売向けとなります。他にも商業向けの什器製造や市内小学校向けの教材や木育施設向けの玩具、イベント用の商材にも使われています。
今回、製材された広葉樹のご説明頂きながら、板材を購入させていただきました。こちらで製材される広葉樹は、入荷した広葉樹のうち、わずか数%で、年々その数も減少傾向とのことです。その背景には、主に広葉樹の原木の取引単価の下落と広葉樹の施業には補助金が付かないという現代の林業の厳しい状況があります。そんな今や貴重な広葉樹ですが、こちらではイタヤカエデ、オニグルミ、サクラ、クリは数ある樹種の中でも取引が多く人気の樹種です。他にもトチやブナ、ホオノキ、ミズメ、ナラ、イチョウなど数多くの樹種の取扱があります。今回は、2年生の学生がイタヤカエデを購入しました。なお、こちらは大型の取引だけでなく、少量の購入も対応していただけるので、個人で活動されている作家さんにも大変良心的です。
木工を学んでいると「貴重な木材をチップにしてしまうなんてもったいない…」と考えてしまいそうになります。しかし、木材というのは、建築物や家具、カトラリーなどの木製品になるばかりでなく、紙や食品、電気など姿を変えて、私たちの生活に広く利用されています。今回、改めて木と私たちの暮らしの関係性を認識できた見学となりました。
文責:兒島京太朗(2年)、迫間涼雅(2年)、増岡卓弥(1年)