エゴノキプロジェクト2016
岐阜を代表する工芸である和傘作りに欠かせないエゴノキを、美濃の森でみんなで収穫するイベント、エゴノキプロジェクトが今年も開催されました。参加したのは森林文化アカデミーの教員、学生、卒業生をはじめ、美濃の林業グループ「山の駅ふくべ」の会員、岐阜や全国各地の和傘職人さん、京都の老舗和傘店さんなど50人余り。今年も1年間の和傘生産に必要な約300本を収穫することができました。
エゴノキを供給していた林業者の方が亡くなり緊急プロジェクトとして始まったこの活動も、今年で5年。実行委員会は和傘部品をつくるアカデミー卒業生がリーダーを務めるようになりました。毎年、たくさんの人がこのプロジェクトに意義を感じて参加してくれることが嬉しいです。写真とともに振り返ります。
11月26日朝9時、美濃市の瓢ヶ岳(ふくべがたけ)で活動がスタート。快晴に恵まれました。
実行委員会代表の多和寛さん。森林文化アカデミー卒業生で、和傘部品づくりに携わっています。
和傘の骨をつなぐ「傘ロクロ」を作る日本で唯一の木工所の長屋一男さん。この部品がエゴノキでできています。
初年度からエゴノキの森の調査を行い、伐採や更新の方針にアドバイスをしている柳澤直・准教授。
地元の林業グループ「山の駅ふくべ」の代表、小椋将道さん。
老舗和傘店からも、毎年参加していただいています。京都の「辻倉」さんと、
京都の「かさ源」さん。
木工ジャーナリストで今年発売の「樹木と木材の図鑑」の著者、西川栄明さんにもご参加いただきました。図鑑の「エゴノキ」の欄には、傘ロクロの写真が載っています。
課題研究で「エゴノキの持続的供給のためのシミュレーション」を研究した森林文化アカデミー卒業生。卒業後もエゴノキの森を気にかけて毎年参加してくれます。
チェンソーで長さを揃える作業をしてくれるのも、林業関係の仕事に携わる卒業生たちです。
新しい試みとして、昨年伐採して和傘部品用には不向きだった太いエゴノキに、ナメコの菌を打ってみました。めでたくナメコが育ち、昼食時にキノコ汁を振る舞うことに。指導した津田格准教授と、和傘職人の高橋美紀さん。
森の恵みをみなさんに味わっていただきました。
大勢の協力もあり、昼過ぎには目標の300本に到達。おつかれさまでした!
この記事では紹介しきれませんが、たくさんの人たちに支えられてこのエゴノキプロジェクトは成り立っています。
課題もあります。切り株から出た若い芽がシカに食べられてしまい、新しいエゴノキの生育が進んでいません。そのためこの森でプロジェクトを継続できるかどうかは難しい状況です。新しい森を探すとともに、この場所での収穫を続けるための研究も、今後の課題としたいと思います。
文:久津輪 雅