ドイツ報告-03 木材を有効利用するための統括組織ProHolz
ドイツBW州で学ぶ木材の有効利用を考えるPro-Holz(統括組織:プロホルツ)、今回はシュトゥットガルトにあるFORUM HOLZBAUで、プロホルツついて説明を受けました。
ここではプロホルツを立ち上げたヘルマンさんとズルビさんからお話しを伺った概要を記します。
BW州には伐採から製材、家具、パルプ関連を含めた林業関係企業が2900あり、従業員は20万人おり、年間310億ユーロ(1ユーロ140円として)を稼ぎ出している。
15年前にはドイツの木材関連産業には、木材を核とした横のつながりがないと指摘されていました。それと同時に、環境問題がされる中、間伐材の有効利用が急務となりました。
木材利用におけるクラスター(連合体)の充実が問題視されたため、100%利用を目指して様々な段階を調査した結果、建材利用で利用率が低い理由に耐火性や断熱性の問題があることがわかった。
これらを横断的にまとめあげるPro-Holz(統括組織)を作り上げ、5つのクラスターごとに木材の有効活用のための広報活動をしている。
プロホルツのメンバーは森林所有者協会や木造建築協会、製材。木材関連業界などで、パートナーは市町村連携、研究所、大学などがあり、木材をどのように100%利用するかを課題としている。
BW州では小さな民有林を集合体化して有効かできないかが課題である。これに対して、2007年~2014年に50のプロジェクトを立ち上げ、780万ユーロ(約10億円)を投資した。
2015年~2019年にかけては、①小さな工務店の生き残り戦略、②技術の継承と利用促進、③地産地消による補助金利用に取り組んでいる。
マネージメントでの課題は、①イニシャリング(地域のオーガニゼーション)、例えば紙業業界のクラスター関係者には「森と関連している」という再認識をさせる。 ②クラスターは全体が7年後に自立できるように誘導されている。 ③クラスターのコンセプトを作成し、理解させ、共同して仕事することを理解させる。
北シュバルツバツト地域は「家具」を中心としたクラスター、他には「建築用木材のクラスター」、ドイツトウヒなどホワイトウッドのクラスター、広葉樹を中心としたクラスターもある。各々のクラスターが自分の弱点を共有し、業界全体として高い位置にステップアップすることを狙う。
このPro-HolzはEUから50%、BW州が25%、企業体から25%出資して運営している。
RCの建物に比較し、「木材」という素材は建築資材の中でも、最も人間に近い素材である。しかし木造建築は、建築の前段階に多くの時間を要する。
ドイツ全体では木造建築は16%程度であるが、BW州の一般住宅のうち木造住宅が60%ほどあるものの、現在大工や現場監督が不足している。
また、ドイツでは難民の問題がある。難民住宅は素早い建設が求められるため、これまでは①モジュールBAUという、2年間の耐用住宅を主流にしてきた。
しかし建設するのに、消耗品的な住宅を作っていては将来的にもったいない。そうであれば、難民認定後も居住できるような耐用年数が高いパッシブハウスを建設して、長年有効利用する方が良いのではないか。と」なってきた。
そこで②エレメント工法構法による20~60年耐用の組み立て式アパートを建設して、今後人口増加すると予測されている(2024~2025年まで)問題に対応している。
またこれとはほかに、木材とコンクリートによる③ハイブリット構法も利用している。
一応の説明を受けた後、岐阜県森林文化アカデミーと岐阜県森林技術開発・普及コンソーシアムについて紹介をさせて頂き、互いの理解を深めました。
続いて、FORUM HOLZBAUの施設説明。
ここの内部は木材(トウヒ材)がふんだんに利用され、構造材もトウヒ、パッシブハウスなのでエアコンは会議室以外は設置されていない。
この建物から500m離れた場所にチップ利用によるバイオマス施設があり、冬はその熱源を利用している。基本的に遮光は外付けシャッターにより、室内の湿度は55%に保たれています。
さて、ドイツのプロホルツはバーデン・ヴュルテンベルク州やバイエルン州で活発に動いていますが旧東ドイツ域や北部では、こうした木材利用に関心が低いようです。
とにかく、木材利用のために業界全体がスクラムを組んで突き進む姿は、日本にとっても見本とする取り組みであったのです。
以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。